お風呂のお湯がぬるくなってしまった時、「追い焚き」機能を使う方は多いでしょう。
しかし、給湯器の機能には「高温差し湯」というものもあり、その違いや効果的な使い方を知らない方もいるかもしれません。高温差し湯とは何か、そして高温差し湯と追い焚きの違いを理解することは、日々のバスタイムをより快適にし、光熱費の節約にも繋がります。
この記事では、高温差し湯のやり方はもちろん、高温差し湯の3つのメリットやデメリット、エコキュートにおける高温さし湯と高温たし湯の違いまで詳しく解説します。
さらに、高温さし湯と追いだきはどちらが節電になるのか、追い焚きとたし湯はどう使い分けるべきかといった疑問にもお答えします。高温差し湯式の具体的な機能と選び方のポイントや、追い焚きの種類とそれぞれの特徴も紹介しますので、ご家庭の給湯器を最大限に活用するための参考にしてください。
目次
高温差し湯とは?基本的な仕組みと追い焚きの違い
- 追い焚きの種類とそれぞれの特徴
- 高温差し湯と追い焚きの違い
- 高温差し湯の3つのメリット
- 高温差し湯のデメリットは?
- 高温さし湯と追いだきはどちらが節電か?
追い焚きの種類とそれぞれの特徴
お風呂のお湯を温め直す「追い焚き」機能は、多くの家庭で重宝されていますが、実はいくつかの種類があることをご存知でしょうか。それぞれの特徴を理解することで、ご自身のライフスタイルに最適な給湯器を選ぶ手助けになります。
追い焚きの方式は、主に「高温差し湯式」と「循環式」に分けられます。
種類 | 特徴 | メリット | デメリット |
高温差し湯式 | 約60℃の高温のお湯を浴槽に直接追加して、全体の温度を上げる方式です。 | 新しいお湯を追加するため衛生的であり、短時間でお湯を温め直すことができます。 | 湯量が増えるため、あふれる可能性があり、水道代が余分にかかります。 |
循環式 | 浴槽のぬるくなったお湯を給湯器に送り、内部で温め直してから再び浴槽に戻す方式です。 | 浴槽内のお湯の量を変えずに温められるため、水道代がかかりません。 | 浴槽のお湯を循環させるため、配管内に汚れが溜まりやすく、こまめな掃除が必要です。 |
このほか、浴槽に直接ヒーターを設置してお湯を温める「ヒーター内蔵式」もありますが、近年の給湯器では高温差し湯式や循環式が主流です。
特にマンションなどでは、配管の都合上、高温差し湯式が採用されているケースも少なくありません。
高温差し湯と追い焚きの違い
「高温差し湯」と「追い焚き」は、どちらもぬるくなったお湯を温め直すための機能ですが、その仕組みには明確な違いがあります。この違いを理解することが、機能を効果的に使い分けるための第一歩です。
最も大きな違いは、「お湯の量を増やすか、増やさないか」という点です。
高温差し湯の仕組み
高温差し湯は、給湯器で作られた約60℃の熱いお湯を、そのまま浴槽に「追加」する機能です。浴槽内のお湯に熱湯を足すことで、全体の温度を上昇させます。そのため、実行後には浴槽内の湯量が増加します。
追い焚きの仕組み
一方、追い焚き(循環式)は、浴槽内のぬるくなったお湯を一度給湯器に取り込み、内部の熱交換器で温め直してから、再び浴槽に戻す仕組みです。浴槽内のお湯を循環させているだけなので、湯量は変わりません。
この二つの違いを表にまとめます。
項目 | 高温差し湯 | 追い焚き(循環式) |
仕組み | 新しい高温のお湯を浴槽に追加する | 浴槽のお湯を循環させて温め直す |
湯量の変化 | 増える | 変わらない |
温める速さ | 速い | やや時間がかかる |
衛生面 | 新しいお湯なので衛生的 | 同じお湯を循環させるため雑菌が繁殖しやすい |
コスト面 | 水道代がかかる | 水道代はかからないが、ガス代や電気代がかかる |
このように、それぞれの機能には一長一短があります。ご家庭の状況や何を優先したいかに合わせて使い分けることが大切です。
高温差し湯の3つのメリット
高温差し湯には、追い焚き(循環式)にはない独自のメリットが3つあります。これらの利点を理解することで、日々のバスタイムがより快適になるでしょう。
短時間でお湯を温められる
最大のメリットは、温め直しのスピードです。高温差し湯は、約60℃の熱いお湯を直接浴槽に投入するため、追い焚きが熱交換器を介してじっくり温めるのに比べて、格段に早く浴槽全体の温度を上げることができます。家族の入浴時間が少し空いてしまった場合や、急いで温かいお風呂に入りたい時に非常に便利です。
衛生的である
前述の通り、高温差し湯は常に新しいお湯を給湯器から供給します。これに対して、追い焚きは浴槽内のお湯を繰り返し循環させるため、配管内に皮脂や雑菌が残りやすく、繁殖の原因となることがあります。その点、高温差し湯は毎回新しいお湯が追加されるため、衛生的な状態を保ちやすいと言えます。小さなお子様がいるご家庭など、衛生面を特に気にされる場合には大きな安心材料となるでしょう。
構造がシンプルで故障しにくい傾向がある
追い焚き機能は、お湯を循環させるためのポンプや複雑な配管が必要です。これに対し、高温差し湯は高温のお湯を供給するだけのシンプルな構造であるため、一般的に追い焚き機能付きの給湯器に比べて故障のリスクが低いとされています。長期的に見ると、メンテナンスの手間や修理費用を抑えられる可能性があります。
高温差し湯のデメリットは?
多くのメリットがある一方で、高温差し湯にはいくつかのデメリットも存在します。使用する前にこれらの点を把握しておくことで、後悔のない選択ができます。
浴槽の湯量が増えてしまう
高温差し湯は新しいお湯を追加する仕組みのため、使用するたびに浴槽の水位が上がります。元々お湯が満杯に近い状態で行うと、お湯があふれてしまい、無駄になってしまう可能性があります。お湯を温め直したい場合は、あらかじめ少しお湯を抜いてから高温差し湯を行うなどの工夫が必要です。
水道代が余分にかかる
湯量が増えるということは、その分だけ水道を使用していることになります。追い焚きが既存のお湯を再利用するのに対し、高温差し湯は使うたびに水道代とガス代(または電気代)の両方が発生します。頻繁に利用すると、光熱費全体で見たときにコストが嵩む可能性がある点は留意しておくべきでしょう。
やけどに注意が必要
高温差し湯で供給されるお湯は、約60℃と非常に高温です。給湯口の近くにいると、出てきたばかりの熱湯に触れてやけどをしてしまう危険性があります。特に、小さなお子様やご高齢の方がいるご家庭では、高温差し湯を使用している間は給湯口に近づかないよう、十分に注意を払うことが大切です。
高温さし湯と追いだきはどちらが節電か?
お風呂を温め直す際、光熱費、特に電気代やガス代が気になるという方は多いでしょう。「高温差し湯」と「追い焚き」では、どちらがより節約につながるのでしょうか。
これは給湯器の種類、特にお使いのものがガス給湯器かエコキュートかによって答えが異なります。
ガス給湯器の場合
ガス給湯器の場合、一般的には「追い焚き」の方がガス代を節約できる傾向にあります。高温差し湯は新しい水から高温のお湯を作るため、その分多くのガスを消費します。一方、追い焚きはまだ温かさが残っているお湯を再加熱するため、比較的少ないエネルギーで済みます。
エコキュートの場合
エコキュートの場合は、状況が逆転し、「高温差し湯」の方が節電につながることが多いです。エコキュートの追い焚きは、貯湯タンク内の熱を利用して、熱交換器を介して浴槽のお湯を温めます。この熱交換の過程でエネルギーのロスが発生しやすくなります。
一方、高温差し湯(エコキュートでは「高温たし湯」とも呼ばれます)は、タンク内に貯めてある熱いお湯を直接浴槽に加えるため、エネルギー効率が良く、結果的に消費電力が少なくて済むのです。
ただし、冬場などで残り湯が非常に冷たい場合は、高温差し湯を何度も行う必要があり、かえって電力を消費することもあります。そのような場合は、残り湯を一度半分ほど捨ててから、新しくお湯を張り直す「ふろ自動」機能を使った方が効率的なケースもあります。
高温差し湯との違い|追い焚きやたし湯との比較
- 高温差し湯のやり方は?
- 追い焚きとたし湯はどう使い分ける?
- エコキュートの高温さし湯と高温たし湯の違い
- 高温差し湯式の具体的な機能と選び方のポイント
高温差し湯のやり方は?
高温差し湯の操作方法は、お使いの給湯器のリモコンによって多少異なりますが、基本的な手順は非常にシンプルです。多くの場合、浴室リモコンに専用のボタンが用意されています。
一般的な操作手順は以下の通りです。
- 浴槽にお湯が張られていることを確認する: 高温差し湯は、あくまでお湯を「足す」機能です。浴槽が空の状態では作動しないか、意図しない動作になる可能性があります。
- リモコンの「さし湯」や「高温さし湯」ボタンを押す: メーカーによっては「あつめ」といった名称のボタンの場合もあります。ボタンを押すと、設定された量(例えば約20リットル)の高温のお湯が浴槽に供給されます。
- 自動で停止するのを待つ: 一定量の差し湯が終わると、自動的に給湯は停止します。もし、一度で希望の温度にならなければ、少し時間を置いてから再度ボタンを押してください。
注意点として、前述の通り、お湯があふれないように事前に湯量を確認しておくことが大切です。また、機種によってはシャワーなど他の場所でお湯を使っていると、差し湯の温度が少し低くなることがありますので、単独での使用が望ましいです。詳しい操作方法については、お使いの給湯器の取扱説明書をご確認ください。
追い焚きとたし湯はどう使い分ける?
給湯器の機能には、「追い焚き」「高温差し湯」の他に、「たし湯」という機能もあります。これらは似ているようで役割が異なるため、状況に応じて適切に使い分けることが快適さと節約の鍵となります。
追い焚きを使うべき時
「浴槽のお湯はぬるいが、湯量は減らしたくない・増やしたくない」という場合に最適です。例えば、家族が連続で入浴する際に、水位を変えずに温度だけを元に戻したい時に役立ちます。水道代をかけずに温め直したい場合に選ぶべき機能です。
たし湯を使うべき時
「お湯の温度はちょうど良いが、量が減ってしまった」という場合に適しています。半身浴で長風呂を楽しんだ後や、子供がお湯を使って遊んだ後など、お湯が減って肩まで浸かれなくなった時に便利です。設定されている温度のお湯が追加されるため、浴槽の温度を大きく変えることなく湯量を増やせます。
高温差し湯を使うべき時
「湯量が増えても良いから、とにかく早くお湯を温めたい」という場合に最も効果的です。ぬるくなったお湯をスピーディーに温めたい時、特にエコキュートで節電を意識したい場合に選択すると良いでしょう。
この3つの機能をまとめると以下のようになります。
- 温度だけ上げたい → 追い焚き
- 量だけ増やしたい → たし湯
- 温度を早く上げたい(量が増えてもOK) → 高温差し湯
このように目的を明確にすることで、最適な機能を迷わず選ぶことができます。
エコキュートの高温さし湯と高温たし湯の違い
エコキュートのリモコンを見ると、「さし湯」や「たし湯」の他に「高温たし湯」というボタンがある機種が存在します。これらは名前が似ていますが、供給されるお湯の温度に違いがあります。
たし湯(さし湯)とは
「たし湯」または「さし湯」は、浴槽のお湯が減った時に使う機能です。リモコンで設定しているお風呂の温度(通常40℃~42℃程度)のお湯が、設定された量だけ追加されます。つまり、お湯の「かさ増し」を目的とした機能です。
高温たし湯とは
一方、「高温たし湯」は、ぬるくなったお湯を温め直すことを目的とした機能です。貯湯タンク内にある熱湯(約60℃~80℃)をほとんど薄めずに浴槽へ供給します。これにより、浴槽全体の温度を効率的に上昇させることができます。ガス給湯器の「高温差し湯」に相当するのが、この「高温たし湯」機能です。
まとめると、エコキュートにおいては以下のようになります。
- たし湯(さし湯): 設定温度のお湯を追加する(湯量補充が目的)
- 高温たし湯: タンク内の高温のお湯を追加する(温度上昇が目的)
この違いを理解し、お風呂の状況に合わせてボタンを使い分けることが、エコキュートを賢く使うポイントです。
高温差し湯式の具体的な機能と選び方のポイント
高温差し湯機能付きの給湯器は、特定のライフスタイルを持つご家庭にとって非常に便利な設備です。ここでは、その具体的な機能と、給湯器を選ぶ際のポイントを解説します。
高温差し湯式が向いているご家庭
- 家族の入浴時間がバラバラなご家庭: 帰宅時間が異なる家族がそれぞれ温かいお風呂にすぐ入りたい場合に、スピーディーに温め直せる高温差し湯は重宝します。
- 衛生面を重視するご家庭: 追い焚きのように同じお湯を循環させないため、常に新しいお湯で清潔な状態を保ちたい場合に適しています。
- 追い焚き配管の掃除が面倒だと感じる方: 循環式の追い焚きは定期的な配管洗浄が必要ですが、高温差し湯式の場合はその手間がありません。
選び方のポイント
- 給湯器の種類(熱源): ガス給湯器か、エコキュートかを選びます。前述の通り、節約の観点ではエコキュートの方が高温差し湯(高温たし湯)と相性が良いとされています。
- 設置場所の確認: 特にマンションの場合、PS(パイプシャフト)内に給湯器が設置されていることが多く、追い焚き配管の設置が難しいため、必然的に高温差し湯式が採用されていることがあります。交換の際も、基本的には同じ設置タイプの機種を選ぶことになります。
- オート・フルオート機能: 高温差し湯機能は、「ふろ給湯器」以上のモデルに搭載されています。お湯はりから保温まで自動の「オート」タイプか、さらに足し湯や配管洗浄まで自動の「フルオート」タイプかを選びましょう。
- 操作パネルの使いやすさ: 家族全員が直感的に操作できるかどうかも大切なポイントです。リモコンの表示が見やすいか、ボタンの配置が分かりやすいかなどを確認すると良いでしょう。
これらのポイントを総合的に考慮し、ご家庭のニーズに最も合った給湯器を選ぶことが、満足のいくバスタイムにつながります。
高温差し湯とは何か?追い炊きの種類を解説:総括
この記事では、高温差し湯の基本的な仕組みから、追い焚きやたし湯との違い、メリット・デメリット、そして効果的な使い方までを詳しく解説しました。最後に、重要なポイントを箇条書きでまとめます。
- 高温差し湯はぬるくなった浴槽に高温のお湯を追加して温める機能
- 追い焚きは浴槽のお湯を循環させて温めるため湯量は変わらない
- 高温差し湯の最大のメリットは温めるスピードが速いこと
- 新しいお湯を追加するため衛生的な点もメリット
- デメリットは湯量が増えることと水道代がかかること
- 高温のお湯が出るためやけどに注意が必要
- エコキュートの場合、追い焚きより高温差し湯の方が節電になることが多い
- ガス給湯器では追い焚きの方が節約になる傾向がある
- 高温差し湯のやり方はリモコンの専用ボタンを押すだけで簡単
- 「追い焚き」は湯量を変えずに温度を上げたい時に使う
- 「たし湯」はお湯の量を増やしたい時に使う
- エコキュートの「たし湯」は設定温度、「高温たし湯」は高温のお湯が出る
- 家族の入浴時間がバラバラな家庭に高温差し湯は特におすすめ
- マンションなどでは設置の都合上、高温差し湯式が採用されやすい
- 給湯器を選ぶ際はライフスタイルや設置環境に合わせて総合的に判断する