「暖房の設定温度は何度がいいですか?」という疑問は、冬になると多くの方が抱える共通の悩みです。
特に冬の暖房設定温度については、電気代の節電や節約を考えるとできるだけ低めに抑えたい一方で、寒さを我慢して体調を崩したくはありません。
環境省推奨の温度設定や、一般家庭での平均的な温度、デリケートな赤ちゃんがいる家庭での適温、さらに寝る時の設定など、暖房設定おすすめの情報は様々で、どれを基準にすれば良いか迷ってしまいます。
インターネットの知恵袋などを見ると、「設定を26度、20度、18度などにしても寒い」といった切実な声や、「結局、暖房のちょうどいい温度は何度?」という質問も多く見られます。
暖房を26度にしても寒いのはなぜなのでしょうか。そして、暖房をつけても暖かくならない原因は、実はエアコンの設定温度だけではないかもしれません。
この記事では、これらの疑問を一つひとつ解消し、快適に過ごすための表面的なテクニックから、寒さの根本的な原因を解決する方法まで詳しく解説します。
目次
暖房の設定温度は何度がいいですか?推奨と実態を調査
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- 暖房設定温度おすすめの目安
- 環境省推奨の適温は20度
- 冬の暖房設定温度、平均は?
- 赤ちゃんがいる部屋や寝る時の注意点
- 節電・節約を意識した温度とは
暖房設定温度おすすめの目安
エアコン暖房の設定温度としておすすめされる目安は「20℃」です。これは、後述する環境省の推奨が大きな根拠となっています。
ただし、ここで非常に重要なのは、これはあくまで「室温(部屋の空気の温度)」の目安であり、エアコンの「設定温度」そのものではないという点です。住宅の断熱性能、日当たり、部屋の広さ、そしてエアコン自体の能力によっては、設定温度を20℃にしても、実際の室温が20℃に達しない場合も少なくありません。
「設定温度」と「室温」のズレ
エアコンは、多くの場合、本体に内蔵された温度センサーで室温を感知しています。エアコン本体は一般的に天井近くの壁に設置されているため、暖かい空気が溜まりやすい「高い位置」の温度を基準にしがちです。
一方で、人が実際に生活する床付近はそれよりも温度が低いことが多いため、「設定温度は20℃なのに、なぜか足元は寒い」という状況が起こり得ます。
まずは設定温度を20℃にしてみて、もし寒く感じるようであれば無理は禁物です。
その場合は、いきなり設定を21℃、22℃と上げる前に、加湿器で湿度を調整したり、カーディガンや靴下などで一枚衣服を足したりといった、他の工夫から試してみるのが良いでしょう。
環境省推奨の適温は20度
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環境省では、冬のエネルギー消費を抑える国民運動「ウォームビズ(WARM BIZ)」の一環として、暖房時の室温目安を20℃にすることを推奨しています。
これは、人々が快適性を損なわずに過ごせるとされる室温と、地球温暖化対策としてのエネルギー削減効果のバランスを取った合理的な温度とされています。エアコンの設定温度を1℃下げるだけで、約10%の消費電力削減につながるとも試算されており、省エネ効果は非常に高いです。
「室温」と「設定温度」の違いに注意
環境省が推奨しているのは、あくまで「室温」が20℃になることです。エアコンの「設定温度」を20℃にしても、前述の通り、部屋の断熱性や広さによっては、実際の室温が18℃や19℃にしかならないこともあります。その場合は、設定温度を21℃や22℃に上げて、実際の室温が20℃に近づくように調整する必要があります。(参照:環境省 ウォームビズ)
なぜ設定温度を1℃変えるだけで10%も節電になるのでしょうか。それは、エアコンが最も電力を消費するのが「外気温と設定温度の差を埋めるとき」だからです。
外気温が5℃の時に設定温度を21℃から20℃に下げるだけでも、エアコンが頑張るべき温度差を縮めることができ、コンプレッサーの負荷が減るため、大きな節電効果が期待できるのです。
冬の暖房設定温度、平均は?
環境省は室温20℃を推奨していますが、実際の家庭ではもう少し高い温度に設定されている傾向が明らかになっています。
大手空調メーカーのダイキン工業が2023年に実施した調査によると、冬の暖房設定温度の全国平均は22.3℃でした。推奨とされる20℃よりも2℃以上高い結果となっています。
これは、やはり室温20℃では肌寒く感じたり、特に日本の住宅は断熱性能が十分でないケースも多く、快適性を確保するために設定温度を上げざるを得なかったりする家庭が多いためと考えられます。推奨温度はあくまで理想であり、実態とは少し差があることを理解しておきましょう。
「20℃じゃ正直寒い…」と感じるのは、決して少数派ではないようですね。
特に窓際や足元が冷えやすい住宅では、推奨温度だとなかなか快適に過ごせないのが実情かもしれません。この「寒さの原因」については、後ほど詳しく解説します。
| 推奨(環境省) | 実態(平均) | |
|---|---|---|
| 温度目安 | 室温20℃ | 設定温度 22℃〜23℃ |
| 目的 | 省エネ・節電 | 快適性の確保 |
赤ちゃんがいる部屋や寝る時の温度の注意点
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暖房の設定温度は、家族構成や時間帯によって柔軟に調整する必要があります。特に配慮したいのが、体温調節が未熟な赤ちゃんがいる場合と、睡眠の質に関わる寝る時です。
赤ちゃんがいる場合の適温
大人が快適だと感じる温度でも、赤ちゃんにとっては暑すぎたり寒すぎたりすることがあります。赤ちゃんはまだ自分で体温をうまく調節する機能が未熟です。
一般的に、赤ちゃんがいる部屋の室温は20℃〜22℃程度が目安とされています。ただし、これはあくまで目安です。赤ちゃんは大人よりも体温が高く新陳代謝も活発なため、大人の感覚で着せすぎたり暖房を効かせすぎたりすると、あせもや脱水症状の原因にもなりかねません。
赤ちゃんの背中やお腹を触って汗をかいていないか、逆に手足が冷たすぎないかをこまめに確認し、衣服や設定温度で調整してあげてください。
寝る時の設定温度
寝る時の暖房設定温度は、快眠を妨げない15℃〜21℃程度が良いとされています。人は体温(特に体の内部の「深部体温」)が下がることで自然な眠りに入りやすくなるため、寝室の温度が高すぎると睡眠の質が低下する原因になります。また、空気が乾燥して喉を痛めることにもつながります。
むしろ注意すべきは、就寝中よりも起床時の室温です。
冬の起床時は「ヒートショック」に注意
夜間に暖房が切れて室温が10℃以下などに下がりすぎると、朝、暖かい布団の中から急に寒い部屋(脱衣所やトイレなど)へ移動することになります。
この急激な温度変化が血圧の急変動を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中につながる「ヒートショック」のリスクを高めるという情報があります。
消費者庁も注意喚起しているように、特に高齢者のいるご家庭では注意が必要です。(参照:消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」)
これを防ぐため、起床する1時間ほど前にタイマーで暖房が入り、室温が18℃程度になるように設定しておくのがおすすめです。
節電・節約を意識した温度とは
節電や節約を最も意識するならば、設定温度は推奨である20℃を目指し、他の工夫で快適性を補うのが最適解です。
前述の通り、設定温度を1℃下げるインパクトは非常に大きいため、まずは設定温度を見直すことが重要です。その上で、エアコンの運転効率を高める工夫を併用すると、さらに効果的です。
エアコンの電気代を節約したいなら、「自動運転モード」を活用するのが基本です。
エアコンが最も電力を消費するのは「運転開始時」です。手動で「弱」に設定し続けると、設定温度に達するまでに時間がかかり、結果的に電力消費が増えることがあります。
近年のエアコンはAIやセンサーが室温や人の活動量を検知し、無駄のない最適なパワー(強風運転や弱風運転)を自動で選択してくれます。「自動運転」で設定温度までは一気に暖め、その後は効率よく室温を維持させるほうが、トータルでの節電につながるケースが多いですよ。
また、エアコンの効率を上げるためには、定期的なフィルター掃除が欠かせません。フィルターがホコリなどで詰まっていると、エアコンが空気を吸い込む力が弱まり、部屋を暖めるためにより多くの電力が必要になってしまいます。
フィルターが目詰まりしているエアコンは、冷暖房の効率が低下し、無駄な電力消費につながると、多くのエアコンメーカーも注意喚起しています。2週間に1回程度を目安に掃除を心がけましょう。
暖房の設定温度は何度がいいですか?寒さの原因
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- 26度、20度、18度でも寒い?知恵袋の疑問
- 暖房のちょうどいい温度は湿度も関係
- 暖房を26度にしても寒いのはなぜ?
- 暖房が暖かくならない原因は断熱かも
- 暖房の設定温度は何度がいいですか?内窓で解決
26度、20度、18度でも寒い?知恵袋の疑問や口コミ
「設定温度を26度にしても寒い」「推奨の20度はもちろん、18度なんてありえない」といった疑問や不満は、インターネット上の知恵袋などでも頻繁に見られます。
なぜ設定温度を上げているはずなのに、寒く感じてしまうのでしょうか。その最大の原因の一つは、「室温」と「体感温度」が必ずしも一致しないからです。
例えば、エアコンが示す設定温度が26℃でも、窓際から冷気が侵入していたり、床が冷たかったりすると、体感温度はそれよりもずっと低く感じられます。室温が20℃あっても、壁や窓の表面温度が15℃であれば、体感温度は約17℃程度にしか感じられないというデータもあります。
体感温度を決める要素
人の体感温度は、主に以下の4つの要素で決まると言われています。
- 室温(空気の温度)
- 湿度
- 気流(風の流れ)
- 放射熱(壁・床・窓の表面温度)
エアコンで直接管理できるのは、このうち主に「室温」だけです。窓際が寒いのは、窓ガラスによって冷やされた空気が下降してくる「コールドドラフト」という気流現象や、窓という冷たい面に体温が奪われる「放射冷却」が原因です。
いくら室温(空気)を暖めても、他の要素が快適でないと寒く感じてしまうのです。
暖房のちょうどいい温度は湿度も関係
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体感温度に大きく影響するもう一つの要因が「湿度」です。
冬は空気が乾燥しがちですが、湿度が低いと体表から水分が蒸発しやすくなり、その際に熱(気化熱)が奪われるため、実際の室温よりも寒く感じます。逆に、湿度が高いと熱が奪われにくくなるため、暖かく感じやすくなります。
一般的に、快適に過ごせる湿度の目安は40%〜60%とされています。湿度が40%未満だと乾燥して肌や喉に不快感が出やすく、インフルエンザウイルスなどが活発になりやすい環境とも言われています。逆に60%を超えると結露やカビ・ダニの発生原因となるため、この範囲でのコントロールが理想です。
一説には、湿度が10%上がると体感温度は1℃上がるとも言われています。設定温度を1℃上げる前に、まずは加湿器などで湿度コントロールを試す価値は十分にあります。
もし暖房をつけても寒いと感じる場合は、まず湿度計で室内の湿度を確認してみてください。
加湿器を使ったり、洗濯物を室内干ししたり、観葉植物を置いたりして湿度を上げるだけで、体感温度が大きく改善されることがあります。
暖房を26度にしても寒いのはなぜ?
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設定温度を26℃のような高い温度にしても寒い最大の理由は、部屋の中で深刻な「温度ムラ」が発生しているからです。
これは空気の基本的な性質によるものです。暖かい空気は軽いため天井付近に溜まり、逆に冷たい空気は重いため床付近に溜まります。エアコンは高い位置に設置されていることが多いため、エアコンのセンサーが「26℃になった」と判断していても、それは暖かい空気が溜まった天井付近の話かもしれません。
一方で、人が生活の中心である床付近には、窓や壁から侵入した冷気が溜まり続け、18℃程度しかない…という状況が起こり得ます。これが「設定温度を上げても寒い」と感じる正体です。
温度ムラ解消の応急処置
根本的な解決にはなりませんが、以下の方法で室内の温度ムラをある程度緩和できます。
- サーキュレーターや扇風機を使う
エアコンの対角線上に置き、天井に向けて風を送るのが効果的です。上に溜まった暖かい空気を部屋全体に強制的に循環させます。 - エアコンの風向きを「下」にする
暖かい空気が床に届くようにします。ただし、風が直接体に当たると寒く感じるため注意が必要です。最新のエアコンには床の温度を検知して自動で調整してくれるものもあります。 - 厚手のカーテンを使う
窓からの冷気の侵入(コールドドラフト)を防ぎます。カーテンは床に付くくらいの長さにするとより効果的です。
ただし、これらはあくまで応急処置です。窓などから冷気が侵入し続ける限り、暖房効率の悪さは改善されません。
暖房が暖かくならない原因は断熱かも
エアコンのフィルターを掃除し、サーキュレーターを回しても、まだ部屋が暖かくならない…。その根本的な原因は、住宅の「断熱性能」が不足している可能性が非常に高いです。
特に、家の中で最も熱の出入りが激しい場所は「窓」です。一般社団法人 日本建材・住宅設備産業協会などの資料によると、冬場、暖房で温められた室内の熱のうち、約50%以上が窓やドアなどの開口部から逃げていっているとされています。
特に古い住宅に多い「アルミサッシ」や「一枚ガラス(単板ガラス)」の窓は、熱を非常に伝えやすいため、外の冷気を強力に室内に伝えてしまいます。
アルミは金属であり、フライパンと同じで熱をよく通します。そのため、いくら暖房で空気を温めても、そばから窓で冷やされ、熱が外に逃げていくため、いつまで経っても部屋が暖かくならないのです。
断熱不足の家のサイン
以下に当てはまる場合、断熱性能(特に窓)が不足している可能性が高いです。
- 窓際に立つと、ヒヤッとした冷気を感じる
- 冬場、窓ガラスにびっしりと結露が発生する
- 暖房を切ると、すぐに部屋が寒くなる
- エアコンの設定温度を25℃以上にしないと暖かく感じない
- 足元が特に冷える
暖房の設定温度は何度がいいですか?という悩みは内窓で解決!
「暖房の設定温度は何度がいいですか?」という悩みの根本的な解決策は、設定温度を無理に上げ続けることではなく、「熱が逃げない部屋」を作ることです。
そのための最も費用対効果が高く、強力な方法が「内窓(二重窓)」の設置リフォームです。
内窓とは、既存の窓の内側(室内側)にもう一つ新しい窓を取り付けるリフォームのことです。
壁を壊すような大掛かりな工事は不要で、1窓あたり1時間程度で完了する場合もあります。窓が二重になることで、既存の窓との間に新しい「空気層」が生まれます。
この空気層が、熱を伝えにくい「断熱材」として機能します。これは、ダウンジャケットが体温で温まった空気を溜め込んで暖かさを保つのと同じ原理です。この空気層が、外の冷気の侵入をブロックし、室内の暖かい空気が外に逃げるのを両側からシャットアウトします。
内窓設置の絶大なメリット
- 断熱効果:暖房効率が劇的にアップし、低い設定温度でも部屋全体が暖かくなります。暖房を切った後も室温が下がりにくくなります。
- 結露対策:外気の影響を受けにくくなるため、不快な結露の発生を大幅に抑制します。カビやダニの予防にもつながります。
- 防音効果:空気層が音を遮断するため、外の騒音や室内の音漏れ対策にも高い効果が期待できます。
- 省エネ効果:暖房効率が上がるため、光熱費の節約に直結します。
補助金活用で賢くリフォーム
現在、国は住宅の断熱性能を高めるリフォームに対して、非常に手厚い補助金制度を用意しています。
内窓の設置も、もちろん対象です。
活用する制度にもよりますが、工事費用の1/3から1/2相当、最大で200万円といった高額な補助金が受けられるケースもあります。例えば2025年現在では「住宅省エネ2024キャンペーン」の一環である「先進的窓リノベ2025事業」などが該当し、非常に高い補助額が設定されています。
補助額は窓の性能(熱貫流率=熱の伝えやすさ)とサイズによって決まります。例えば、戸建住宅・低層集合住宅の場合、以下のような補助額が設定されている例があります。
| 窓の性能 (Uw値) | サイズ:大 (2.8㎡以上) | サイズ:中 (1.6㎡以上2.8㎡未満) | サイズ:小 (0.2㎡以上1.6㎡未満) |
|---|---|---|---|
| P (SS) 【1.1以下】 | 106,000円 | 72,000円 | 46,000円 |
| S 【1.5以下】 | 65,000円 | 44,000円 | 28,000円 |
| A 【1.9以下】 | 26,000円 | 18,000円 | 12,000円 |
※上記は一例です。補助金制度は年度や条件、予算上限によって内容が異なります。必ず最新の公式情報を確認してください。(先進的窓リノベ2025事業:公式ページ)
「設定温度を上げても寒い」と感じているなら、それはエアコンの故障ではなく、「窓」が原因かもしれません。
補助金が充実している今こそ、根本的な断熱対策として内窓リフォームを検討する絶好の機会です。
以下に、この記事の要点をまとめます。
- 暖房の設定温度は「何度がいいですか」と悩む方は多い
- 環境省が推奨する室温の目安は20℃
- 実際の平均設定温度は22℃から23℃程度
- 赤ちゃんがいる場合は室温20℃前後が目安
- 寝る時の適温は15℃から21℃とされる
- 節電・節約には設定温度を1℃下げることが効果的
- 設定温度を上げても寒い原因は体感温度にある
- 湿度が低いと体感温度が下がり寒く感じる
- 湿度は40%から60%を保つ工夫をする
- 暖房を26度にしても寒いのは温度ムラが原因
- 暖かい空気は上に、冷たい空気は下にたまる
- 暖房の熱の約5割は窓から逃げている
- 根本的な原因は住宅の断熱性能不足
- 最も効果的な寒さ対策は内窓の設置
- 内窓リフォームには国の補助金が活用できる
- 補助金を活用してお得に断熱リフォームを検討する