風が強い日、換気扇から「パタパタ」「ゴーッ」という、普段は聞こえないうるさい音がして、不快な思いやストレスを感じていませんか。
特に近年の高気密なマンションにお住まいの場合、換気扇がうるさいと感じやすく、台風や強風の日はその音が室内に響いてしまい、睡眠や集中できないこともあるでしょう。
そもそも、換気扇の風で音がするのはなぜですか?この疑問を解消するため、この記事では、まず換気扇が風が吹くとうるさい理由や仕組みから分かりやすく丁寧に解説します。
換気扇がうるさいと言っても、その症状は様々です。
シャッターが風にあおられる「パタパタ」という風切音、ファンに汚れが溜まった「ゴー」という低い音、モーターが劣化してきた「キーン」という甲高い音など、多岐にわたります。
これら換気扇のうるさいキーン・ゴー・パタパタ・風切音の対策は、音の原因によって根本的に異なります。
そのため、ご自宅の換気扇から聞こえる音が、放置しても大丈夫な「正常音」なのか、対処が必要な「異常音」なのか、まずは正常音と異常音の違いや見抜き方を知ることが非常に重要です。
その上で、この記事では具体的な換気扇の風が吹くとうるさい時の対策を網羅的にご紹介します。
例えば「キュルキュル」音がする場合に換気扇がうるさい場合に潤滑油を使うメンテナンス方法、「ゴー」音がする場合の掃除方法や手順など、セルフケアできる内容を詳しく掘り下げます。
また、キッチンのレンジフードが風でうるさい対策のポイントや、「パタパタ」音に効果的な換気扇のシャッターに消音テープを貼る方法、そして具体的な換気扇の消音テープの貼り方についても分かりやすく説明します。
もちろん、賃貸でもできる対処法3選のように、原状回復が前提の環境でも安心して試せる方法も充実させています。
セルフケアやDIYで改善しない場合に備え、失敗しない修理業者を選ぶときのポイントまで、換気扇の騒音問題を解決するための情報を幅広くお届けします。
換気扇の風が吹くとうるさい場合の対策と音別の理由
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換気扇の騒音には様々な原因が潜んでいます。まずは「なぜ音が鳴るのか」という根本的な仕組みと、音の種類別に見分ける方法、そしてそれぞれの対策の概要を解説します。
- 換気扇が風が吹くとうるさい理由や仕組み
- 換気扇の風で音がするのはなぜですか?
- 正常音と異常音の違いや見抜き方
- キーン・ゴー・パタパタ・風切音の理由と対策
- 強風の時の音の対処法
- マンションの24時間換気の吸気口と通気口がうるさい原因と対策
- 潤滑油でのメンテナンス
換気扇が風が吹くとうるさい理由や仕組み
換気扇が風でうるさくなる最も一般的で直接的な理由は、「外から吹き込む強風による空気の逆流」と、それに伴う「内部部品の物理的な振動」です。
換気扇は、本来「室内の空気を外に排出する」ための一方通行の装置です。そのため、排気口やダクト(空気の通り道)の途中には、外からの空気や虫の侵入を防ぐための「シャッター(逆流防止弁)」が設置されています。
しかし、台風やビル風などで外の風が非常に強くなると、その風圧が換気扇の排出する力に勝ち、排気口やダクトを通って室内に向かって空気が逆流しようとします。
この逆流してきた強い風が、内部にあるシャッターやファン自体に激しくぶつかります。
これにより、シャッターが風にあおられて「パタパタ」「バタバタ」と激しく開閉したり、本来の回転方向とは逆向きにファンが押されて「ガタガタ」と振動したりして、大きな騒音が発生するのです。
シャッターの種類について
換気扇のシャッターには、換気扇のスイッチと連動して電気で開閉する「電動式」と、ファンの回転による風圧で開く「風圧式」があります。
どちらのタイプであっても、強風による逆流を受けると「パタパタ」という音や、シャッターが閉じきれずに風が漏れる「ヒュー」という音が発生する可能性があります。
換気扇の風で音がするのはなぜですか?
前述の「風の逆流」という物理的な原因とは別に、「室内外の気圧差」が原因で笛のような音が発生するケースもあります。
これは、特に近年の気密性が高いマンションや戸建て住宅で起こりやすい現象です。窓やドアをすべて閉め切った気密性の高い空間でキッチンのレンジフードなどを「強」で運転させると、室内の空気が一方的に屋外へ排出されます。
その結果、室内の空気量が減り、室内が「負圧(ふあつ)」、つまり外の気圧よりも低い状態になります。自然は気圧の差を嫌うため、外の気圧(正圧)と同じになろうと、空気は少しでも隙間がある場所から猛烈な勢いで室内に入り込もうとします。
この時、閉まっているはずの他の換気扇の排気口や、壁に設置された給気口、窓のサッシのわずかな隙間などを空気が通り抜ける際に、「笛を吹く」のと同じ原理で「ヒューヒュー」「ピー」といった甲高い風切り音が発生することがあります。
この場合の対策は?
もし換気扇を作動させた時だけ「ヒューヒュー」という音が鳴り、止めると音が消える場合は、故障ではありません。それは換気が正常に行われている証拠でもあります。
対策としては、換気扇から少し離れた場所の窓を数センチ開けるか、壁にある「給気口(通気口)」を正しく開放して、空気の入口(給気経路)をしっかり作ってあげることが最も有効です。
これにより室内の負圧が解消され、音はすぐに収まります。
現代の住宅は、シックハウス対策のため24時間換気システムの導入が求められており、計画的な「給気」と「排気」のバランスが重要です。(出典:国土交通省「シックハウス対策について知っておこう。」)
正常音と異常音の違いや見抜き方
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換気扇から聞こえるうるさい音には、対処が必要な「異常音」と、強風時など特定の条件下で発生する「正常音(ただし不快な音)」があります。
音が聞こえたら、まずはどの種類に該当するかを見極めることが非常に大切です。「カラカラ」や「キーン」といった音は、モーターの故障や寿命が迫っているサインかもしれず、放置すると火災のリスクにもつながりかねません。
以下の表で、ご自宅の換気扇から聞こえる音がどれに近いかを確認してみてください。
| 音の種類 | 主な原因 | 緊急度 |
|---|---|---|
| パタパタ・バタバタ | 外からの強風、シャッターの動作音 | 低(正常音) ただし不快なため対策推奨 |
| ゴー・ブーン・ボー | ファンやフィルターの油汚れ・ホコリの蓄積による回転バランスの乱れ | 中(要清掃) 放置するとモーター劣化の原因 |
| キュルキュル・チチチ | モーター軸の潤滑油不足(油切れ)による金属摩擦音 | 中(要メンテナンス) 放置すると軸が摩耗する |
| キーン・キィー | モーターの経年劣化(内部ベアリングの摩耗) | 高(要交換) 寿命のサイン。修理・交換を検討 |
| カラカラ・ガタガタ | モーターの軸ズレ、ファンや部品の破損・脱落 | 高(要修理・交換) 危険。即時使用中止 |
| ジー・ジジジ | モーター内部のサビ、部品同士の摩擦、電気的なノイズ | 高(要修理・交換) 内部劣化。点検・交換を推奨 |
基本的に、「パタパタ」音は強風によるもので換気扇自体の故障ではありません。
しかし、「ゴー」音は汚れのサイン、「キーン」「カラカラ」「ジー」といった音はモーター本体の異常を示している可能性が極めて高いため、早急な対処が必要です。
キーン・ゴー・パタパタ・風切音の理由と対策
聞こえてくる音の種類によって、取るべき対策は全く異なります。音の原因を特定したら、それぞれに合った正しい対処法を選びましょう。間違った対処法は、かえって症状を悪化させる可能性もあります。
| 音の種類 | 主な対策方法 |
|---|---|
| パタパタ・バタバタ (風切音) | ・換気扇シャッターやカバーの隙間に消音テープ(隙間テープ)を貼る ・(可能なら)屋外の排気口を防風(耐風)フードに交換する ・強風の日は一時的に運転を止めるか、「弱」運転にする |
| ゴー・ブーン (低い音) | ・フィルター、ファン(シロッコファン)の徹底的な掃除(油とホコリの除去) ・汚れがひどすぎて落ちない場合は、プロのハウスクリーニングに依頼する |
| キュルキュル・キーン (甲高い音) | ・まずファンを徹底的に掃除する(汚れによる負荷が原因の場合もあるため) ・改善しない場合、モーターの回転軸に潤滑油(グリス)を差す ・それでも改善しない場合は経年劣化の可能性大。本体交換を検討 |
| カラカラ・ジー (異音) | ・即時使用を中止し、ブレーカーを落とす ・専門業者による点検・修理を依頼する(絶対に自分で分解しない) ・多くの場合、安全のため本体の交換が必要 |
強風の時の音の対処法
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台風の日や、冬の木枯らしが吹く日など、特に強風の日にだけ「パタパタ」「バタバタ」という音がひどくなる場合は、いかに風の逆流を防ぐか、または音を吸収するかという対策が中心となります。
最も簡単で誰でもすぐにできる即効性のある対処法は、一時的に換気扇の運転を止めることです。運転を止めればシャッターが閉じるため、風の侵入を最小限に抑えられます。ただし、調理中やお風呂場など、湿気や煙が発生する場所では換気を止めるわけにいきません。
その場合は、前述の「気圧差」の原理を応用します。
強風が吹き付けてくる側の窓は固く閉め、換気扇から一番遠い場所(風が直接当たらない側)の窓や給気口を少し開けることで、空気の逃げ道ができ、室内の気圧バランスが整って音が和らぐことがあります。
より根本的な対策としては、屋外の排気口(ベントキャップ)を、風が直接ダクト内に入り込みにくい「防風(耐風)タイプ」のフードに交換する方法があります。これはフードの形状が工夫されており、横殴りの雨や風の直撃を防ぎ、ダクト内への逆流を大幅に軽減できる可能性があります。
賃貸物件での注意点
屋外の排気フード(ベントキャップ)の交換は、建物の「共用部分」または「専用部分の設備」にあたります。賃貸物件にお住まいの場合は、必ず管理会社や大家さんへの相談が必須です。絶対に無断で交換しないでください。破損させた場合、高額な修繕費用を請求されるリスクがあります。
マンションの24時間換気の吸気口と通気口がうるさい原因と対策
マンションの壁に設置されている「吸気口(給気口)」や「通気口」。
これらは24時間換気システムの一部として室内の空気を清浄に保つために不可欠な設備ですが、時に「ゴー」「ヒュー」「パタパタ」といった騒音の原因になることがあります。
これは換気扇本体の故障とは別の問題であり、原因に応じた正しい対処が必要です。ここでは、音の種類別に考えられる原因と、賃貸物件でも安全に行える対策、そして絶対にやってはいけないNG行動についてまとめて解説します。
音の種類別:騒音の主な原因
まずは、どのような音が鳴っているかで原因を切り分けます。
原因1:外部からの騒音(交通音・話し声)
吸気口は外と直接つながる「空気の通り道」です。そのため、構造上、ある程度は外部の音がそのまま室内に入りやすくなっています。特に大通りに面した部屋や、近隣との距離が近い住宅地では、車の走行音、バイクの音、救急車のサイレン、近所の話し声などが吸気口からダイレクトに侵入し、騒音として感じられます。
原因2:風切り音(ヒューヒュー音)
「ヒュー」「ピー」といった笛のような甲高い音は、典型的な「風切り音」です。これには主に2つのパターンが考えられます。
- パターンA:外の風が強い
台風や強風の日、外の強い風が吸気口のカバーや内部のフィルター、ルーバー(羽)に直接当たり、笛と同じ原理で音が発生します。 - パターンB:室内外の気圧差(負圧)
窓を閉め切った状態でキッチンのレンジフードを「強」で運転すると、室内の空気が一方的に排出され、室内が強い負圧(気圧が低い状態)になります。すると、唯一の空気の入口である吸気口から、空気が無理やり狭い隙間を通ろうとして、猛烈な勢いで「ヒュー」と音を立てて流れ込みます。
原因3:部品の振動音(ガタガタ音)
風が吹くたびに「ガタガタ」「カタカタ」と部品が揺れる音がする場合、カバーや内部のフィルターが正しく設置されていないか、長年の使用で緩んでいる可能性があります。
自分でできる安全な騒音対策
上記の原因を踏まえ、賃貸物件でも原状回復が可能な範囲で試せる対策を紹介します。
対策1:フィルターの清掃と「防音フィルター」への交換
風切り音(原因2)の多くは、フィルターの目詰まりが原因です。フィルターがホコリや花粉で目詰まりしていると、空気の通り道が極端に狭くなり、わずかな風でも音が発生しやすくなります。
まずは吸気口のカバーを外し、フィルターを取り出して水洗い(または掃除機で吸引)し、しっかり乾燥させてから戻しましょう。これだけで音が劇的に軽減することも少なくありません。
また、外部騒音(原因1)にお悩みの場合、最も効果的な対策は、内部のフィルターを、市販の「防音フィルター」や「吸音ウレタン素材」のものに交換することです。これらの製品は、空気は通しつつ、音(特に高音域)を吸収・減衰させる特殊な構造をしています。
ご自宅の吸気口のサイズや型番に合った交換用フィルターは、ホームセンターやオンラインストアで入手可能です。フィルター交換は原状回復が容易なため、賃貸でも非常に試しやすい対策です。
対策2:気圧差(負圧)の調整(レンジフード使用時)
レンジフード使用時の「ヒュー」音(原因2-B)は、故障ではありません。換気が正常に行われている証拠でもあります。
この音を止めるには、レンジフード使用時は、吸気口のカバーを「全開」にするか、レンジフード(キッチン)から最も遠い部屋の窓を少し(数センチ)開けることで、空気の入口を増やし気圧差を解消すれば、音はすぐに収まります。
対策3:振動音の対策(部品の再設置・テープ)
「ガタガタ」音(原因3)がする場合は、一度カバーやフィルターを取り外し、取扱説明書を見ながら正しくはめ直してみてください。それでもガタつきが収まらない場合は、カバーと壁の接地面や、フィルターの縁にごく薄い隙間テープ(クッション材)を貼ることで、振動を抑え込むことができます。
【厳禁】通気口がうるさい時のNG対策:完全密閉
騒音を止めたい一心で、通気口の穴そのものをガムテープ、ビニール、粘土、パテなどで完全に密閉してしまうのは絶対にNGです。これは非常に危険な行為であり、健康被害や重大な事故につながる恐れがあります。
賃貸マンションで試せる正しい対処法(相談)
騒音がひどく、我慢できない場合、以下のステップで安全に対処しましょう。
ステップ1:自分でできるメンテナンス(清掃・フィルター交換)
まずは、前述の「対策1」で解説した「フィルターの清掃」を徹底的に行います。また、市販されている「純正品」または「互換性のある防音フィルター」への交換も試みてください。
安易にウレタンやティッシュなどを自分で詰め込むと、空気抵抗が変わりすぎて換気不良になったり、内部で結露してカビの温床になったりするため避けましょう。
ステップ2:管理会社・大家さんへの相談
セルフケア(清掃・フィルター交換)を行っても騒音が改善しない場合や、明らかに部品が破損している場合、風切り音が常軌を逸して大きい場合は、DIYで無理に対策する前に、必ず管理会社や大家さんに相談してください。
管理会社への相談時のポイント
連絡する際は、以下の情報を具体的に伝えると、状況が伝わりやすくスムーズです。
- いつから:(例:最近風が強い日だけ、入居時からずっと)
- どんな音が:(例:ヒューヒュー笛の音、ガタガタ振動音、外の車の音)
- どの程度:(例:眠れないほど、テレビの音が聞こえにくい)
- 自分で行った対策:(例:フィルターを掃除したが改善しない、防音フィルターに変えてみた)
設備(通気口)の経年劣化や、元々設置されている部品の不具合(防音性能が低すぎるなど)である可能性もあります。
その場合、貸主(大家さん)の負担で、より性能の高い防音タイプの吸気口カバーに交換してもらえるケースもあります。音を我慢し続ける前に、まずは「設備の不具合かもしれない」という観点で相談してみましょう。
マンションの換気扇がうるさい!風の音がする理由
マンション、特に高層階にお住まいの場合、戸建て住宅とは異なる特有の事情により、換気扇の風切り音や騒音が発生しやすくなります。主な理由は以下の3つです。
高層階は風が遮られない
地上付近では建物や樹木が風をある程度遮ってくれますが、高層階(一般的に10階以上など)になると、周囲に風を遮るものがありません。そのため、気象情報で発表される風速よりも遥かに強い風(ビル風)に常にさらされており、排気口から風が逆流しやすくなります。
現代の建物の「高気密性」
近年のマンションは、省エネや遮音性の観点から、サッシやドアの性能が向上し、非常に高い気密性で設計されています。これは快適な生活に寄与する一方、換気扇を回すとH3-2で解説した「負圧」の状態になりやすく、給気口やわずかな隙間から「ヒューヒュー」という笛吹き音が発生しやすい環境と言えます。
24時間換気システムの存在
2003年(平成15年)7月以降に建てられた建物には、シックハウス症候群を防ぐため、「24時間換気システム」の設置が建築基準法で義務付けられています。
このシステムは、お風呂やトイレの換気扇が常に弱い力で空気を排出し続けることで、室内の空気を2時間で1回入れ替えるよう設計されています。この「常に弱い力で排気している状態」が、外からの強風とぶつかり合い、音が鳴りやすくなる一因とも言われています。
潤滑油でのメンテナンス
もし換気扇から聞こえる音が「キュルキュル」「チチチ」といった何かが擦れるような摩擦音や、「キーン」という甲高い金属音の場合、モーター軸の潤滑油(グリス)不足が原因である可能性が考えられます。
ただし、このメンテナンスを行うには非常に重要な大前提があります。それは、まずはファンとフィルターを徹底的に掃除することです。
なぜなら、ホコリや油汚れがファンにアンバランスに固着すると、回転バランスが崩れ、モーター軸に異常な負荷がかかります。
その結果、本来は長持ちするはずの潤滑油が早期に切れてしまい、音が鳴っているケースが多いからです。汚れを落とさずに油だけ差しても、根本的な解決にはなりません。
掃除をしても音が改善しない場合に限り、以下の手順で潤滑油の塗布を試します。
- 安全のため必ずブレーカーを落とします。(感電や怪我の防止)
- 取扱説明書に従い、ファンを取り外します。(プロペラファンまたはシロッコファン)
- ファンがはまっていた中心部、本体から突き出ている「モーター軸(金属の棒)」の根元部分を確認します。
- 古い油や汚れをウエス(布)で綺麗に拭き取り、そこに新しい潤滑油(グリス)をごく少量、綿棒などで塗布します。
潤滑油の選び方に注意!
潤滑油は何でも良いわけではありません。一般家庭でよく使われる「CRC 5-56」などのサラサラした浸透性潤滑スプレーは、以下の理由から換気扇のモーター軸には絶対に使用しないでください。
- 元々塗られている粘度の高い「グリス」を洗い流してしまい、短時間で症状が悪化する
- 粘度が低いためすぐに流れ落ち、潤滑効果が持続しない
- 周囲のプラスチック部品を侵し、破損させる危険性がある
使用するのは、「シリコングリース」や「ウレアグリース」、「ベアリング用グリス」など、粘度が高く、耐熱性があり、長期間潤滑性能を保てるものを選んでください。
換気扇の風が吹くとうるさい場合の対策と賃貸でもできる対策
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ここからは、より具体的な実践編として、賃貸物件でも可能な対策や、キッチンのレンジフード特有の対策、そしてDIYの定番である消音テープの使い方まで、詳しく解説していきます。
- 賃貸でもできる対処法3選
- 風が吹くとうるさい場合の掃除方法や手順
- レンジフードの風がうるさい時の対策のポイント
- 消音テープの貼り方ガイド
- 換気扇シャッターに消音テープを貼る活用法
- 修理業者を選ぶときのポイント
賃貸でもできる対処法3選
賃貸物件にお住まいの場合、設備は「借り物」であるため、勝手に交換したり、壁に穴を開けたり、構造を変えたりすることはできません。
退去時の「原状回復」を前提とした、自分でできる安全かつ効果的な対処法を3つ厳選して紹介します。
【ゴー音対策】フィルターとファンの徹底的な清掃
最も安全かつ基本的な対策です。「ゴー」「ブーン」という低い音は、その約7割が汚れの蓄積による回転バランスの乱れが原因と言われています。
フィルターやファン(プロペラやシロッコファン)を傷つけないように優しく掃除するだけで、驚くほど静かになるケースは少なくありません。これは入居者の「善管注意義務」の範囲内とも言える基本的なメンテナンスです。
【パタパタ音対策】消音テープや吸音材の活用
「パタパタ」音や「ヒュー」という隙間風の音に有効な対策です。換気扇の室内側カバーの縁(本体との隙間)や、シャッターが閉じた時に当たる部分に、100円ショップやホームセンターで手に入る「隙間テープ(消音テープ)」を貼ります。
これにより、振動音や隙間風の音を物理的に和らげることができます。退去時に綺麗に剥がせるよう、粘着力の強すぎないタイプや「剥がしやすい」と明記された製品を選ぶのがコツです。
【使用での対策】使用方法の工夫
設備に一切手を加えず、使い方を工夫する方法です。
音がどうしても気になる場合は、まず換気扇の運転モードを「強」から「弱」に変えてみましょう。
風量が落ちるため、強風とぶつかる力が弱まり、音がかなり小さくなることがあります。また、天気予報を確認し、風が特に強い時間帯(一般的に日中)を避け、比較的風が穏やかな早朝や夜間にまとめて換気する、といった工夫も有効です。
風が吹くとうるさい場合の掃除方法や手順
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「ゴー」「ブーン」という低い唸り音は、換気扇の「もう限界です」というSOSサインです。これはファンに油汚れやホコリが長年蓄積・固着し、その重さで回転バランスが崩れ、モーターに過剰な負荷がかかっている音です。
放置するとモーターの寿命を著しく縮めるだけでなく、換気効率の低下、電気代の無駄遣い、最悪の場合はモーターの過熱による発火(火災)の原因にもなりかねません。
以下の手順を参考に、安全に掃除を行いましょう。
換気扇の掃除手順(シロッコファンの例)
- 安全確保:必ず換気扇のブレーカーを落とします。コンセントがあるタイプはコンセントも抜いてください。(感電・誤作動による怪我の防止)
- 養生:換気扇の下のコンロや床に、洗剤や油汚れが垂れても良いように、新聞紙や養生テープ、大きなビニールシートを敷き詰めます。
- フィルター・カバー取り外し:フィルターや整流板(レンジフードの下部の板)、カバー類を取り外します。これらも油で汚れているため、シンクなどで洗剤につけ置きします。
- ファン取り外し:内部のシロッコファンを固定しているネジ(多くは中央のスピンナー)を回して取り外します。ネジの回転方向は「時計回り(締める方向)」で緩むタイプが多いので注意してください。取扱説明書を必ず確認しましょう。
- ファンつけ置き:大きなビニール袋(45L推奨)を2枚重ねにしてシンクや段ボール箱に入れ、その中にファンを入れます。油汚れに強いアルカリ性洗剤(セスキ炭酸ソーダや重曹、または市販の専用クリーナー)を振りかけ、40〜50度のお湯をファンが浸るまで注ぎ、袋の口を縛って30分〜2時間ほどつけ置きします。
- 洗浄:汚れが十分に浮いてきたら、ゴム手袋を装着し、古い歯ブラシや専用のブラシ、スポンジでファンの羽(フィン)の隙間を一枚ずつ丁寧にこすり落とします。
- 完全乾燥:最も重要なポイントです。洗浄した全てのパーツは、お湯で洗剤を完全に洗い流した後、タオルで水気を拭き取り、さらに丸一日ベランダや風通しの良い場所で陰干しして完全に乾燥させます。水分が残っているとサビや故障、カビの原因になります。
- 取り付け:完全に乾いたことを確認し、ファン→フィルター→カバーの順に、取り外した時と逆の手順で元通りに取り付けます。最後にブレーカーを戻し、異音やガタつきがないか試運転して完了です。
掃除の注意点
・必ずゴム手袋を着用してください。アルカリ性洗剤はタンパク質(皮膚)を溶かすため、非常に強力です。
・ファンの塗装を傷つけたり、フィンを変形させたりしないよう、金属たわしなどで強く擦るのは避けてください。
・掃除方法はメーカーや機種によって異なります。詳細は必ずご自宅の換気扇の取扱説明書、またはメーカーの公式サイト(例:パナソニック「レンジフードのお手入れ」)などを確認してください。
レンジフードの風がうるさい時の対策のポイント
キッチンのレンジフードは、構造が複雑でダクト(配管)も長いため、音が響きやすい設備です。風でうるさい場合の対策のポイントは「ファン」と「ダンパー(シャッター)」の2点にあります。
シロッコファンの清掃
レンジフードの騒音原因の多くは、内部にある「シロッコファン」(カタツムリのような形状のファン)に蓄積した油汚れです。前述の掃除手順に従い、ファンの羽一枚一枚にこびりついた重い油の塊を徹底的に除去することが、レンジフードの騒音・振動対策の基本中の基本です。
電動シャッター(ダンパー)の確認
多くのレンジフードは、調理台の近くではなく、ダクトの途中や屋外の排気口の直前に「電動シャッター(ダンパー)」という逆流防止弁が設置されています。これは換気扇のスイッチと連動して自動で開閉する仕組みです。
しかし、このダンパーの可動部にも長年の油汚れが蓄積すると、動きが非常に悪くなり、完全に閉まりきらなくなったり(パタパタ音の原因)、逆に開きにくくなったり(ゴー音の原因)します。また、強風でガタガタと音を立てることもあります。
ダンパーの清掃や調整は、レンジフード本体を分解したり、天井裏や壁の内部にアクセスする必要があるため、素人が手を出すのは非常に困難かつ危険です。
ファンを徹底的に掃除しても「ゴー」音や「ガタガタ」音が消えない場合は、このダンパーの不具合を疑い、速やかに専門業者に点検を依頼することをおすすめします。
消音テープの貼り方ガイド
「パタパタ」というシャッター音や、「ヒュー」という隙間風の音に、最も手軽でDIYとして効果的なのが、消音テープ(市販の隙間テープ)です。
テープには、振動吸収に優れたスポンジ状の「ウレタンフォームタイプ」や、耐久性の高い「ゴム系タイプ」、起毛している「モヘアタイプ」などがあります。換気扇の室内側カバーの隙間に使用する場合は、貼りやすくクッション性の高いウレタンフォームタイプが適しています。
消音テープの貼り方手順(室内カバーの例)
- 清掃と脱脂:テープを貼る場所(換気扇カバーの縁や、本体と壁の隙間など)のホコリ、油分、水分を徹底的に拭き取ります。油分が残っていると粘着力が著しく低下し、すぐに剥がれてしまいます。可能であれば、パーツクリーナーやアルコールなどで拭き上げ、完全に脱脂するのが最も効果的です。
- 採寸とカット:貼りたい場所の長さ(例:カバーの全周)をメジャーで正確に測り、テープをハサミでカットします。
- 貼り付け:テープの剥離紙を一度に全部剥がさず、5〜10cmずつ少しずつ剥がしながら、空気が入らないように指でしっかりと押さえつけて貼っていきます。カーブ部分はテープを少し引っ張り気味に貼ると、シワにならず綺麗に馴染みます。
貼り付け時の注意点
テープを貼る際は、換気扇の「吸気口」や「排気の流れ」を絶対に塞がないように細心の注意を払ってください。例えば、カバーの外周の隙間に貼るのは有効ですが、カバーのガラリ(スリット)部分や、フィルターそのものに貼るのは厳禁です。
空気の流れを妨げると、換気効率が著しく低下するだけでなく、空気が無理やり狭い隙間を通ろうとして新たな風切り音(ヒュー音)が発生したり、モーターに過剰な負荷がかかり、別の騒音や故障の原因となったりします。
換気扇シャッターに消音テープを貼る活用法
「パタパタ」音の根本原因である「シャッター(逆流防止弁)」そのものに直接アプローチする、より積極的な活用法です。
これは、シャッターが閉じたときに枠とぶつかる「カタン!」「バタン!」という衝撃音や、風による小刻みな振動音を和らげるのが目的です。
最も効果的なのは、シャッターの羽根の縁(フチ)や、シャッターが当たる側の枠(フレーム)に、ごく薄い隙間テープや、椅子の脚に貼るようなクッション性のあるフェルト生地などを小さくカットして貼ることです。
貼り方のコツ:とにかく「薄く」
ここで使用するテープやクッション材は、できるだけ「薄手」のもの(厚さ1〜2mm程度)を選ぶのが最大のコツです。
テープが厚すぎると、シャッターが完全に閉まりきらなくなり、常に隙間が空いた状態になってしまいます。
その結果、かえって隙間風の「ヒューヒュー」音が発生したり、外の冷気や虫が侵入したりする原因になります。シャッターの「密閉性」を妨げない、最小限の厚みのものを選定してください。
なお、キッチンのプロペラファンなど、室内側からシャッターに手が届く場合は比較的簡単ですが、お風呂場やトイレの換気扇、レンジフードのシャッターは天井裏や壁の内部にあるため、素人が触ることはできません。屋外の排気フード側のシャッターに作業するのも高所作業となり大変危険です。
まずは安全な室内側の換気扇カバーの隙間対策から行い、それでも改善しない場合の最終手段として検討しましょう。
修理業者を選ぶときのポイント
掃除をしても、潤滑油を差しても、テープを貼っても音が改善しない場合、あるいは最初から「カラカラ」「ジー」「ガタガタ」といった明らかな異常音がする場合は、モーターの経年劣化(製品寿命は約10〜15年)や内部部品の深刻な破損が考えられます。
これらの症状は、セルフメンテナンスで直ることはありません。無理に自分で分解・修理しようとすると、感電や火災、部品のさらなる破損を招く危険があるため、速やかに専門業者による点検・修理を依頼してください。
信頼できる業者の選び方
- 見積もりが明確か:作業前に必ず現地調査をしてもらい、「何にいくらかかるのか」が詳細に記載された見積書(作業内容、部品代、出張費など)を提示してくれるか確認します。「基本料金〇〇円〜」といった曖昧な表示や、電話口だけで確定金額を提示する業者には注意が必要です。
- 相見積もりを取る:焦っている場合でも、可能な限り2〜3社から相見積もりを取り、料金と作業内容を比較検討します。極端に安い業者は、後から高額な追加費用を請求するケースもあるため注意しましょう。
- 実績と保証の有無:ご自宅の換気扇(レンジフードなど)と同じタイプの修理・交換実績が豊富か、修理後に「〇年保証」などのアフターサービスが付くかを確認しましょう。
- 資格の有無:換気扇の交換には、既存の配線を触る電気工事が伴う場合があります。この作業は「電気工事士」の国家資格が必須です。無資格者が作業を行うと違法であり、火災や漏電のリスクが非常に高まります。資格保有者が在籍しているか必ず確認しましょう。
賃貸物件の場合まずは管理会社へ連絡!
賃貸物件にお住まいの場合、いかなる場合も、まず最初に管理会社や大家さんへ連絡してください。
換気扇は「設備」であり、その所有権は貸主(大家さん)にあります。入居者の故意や過失(掃除を全くしなかったなど)でない限り、経年劣化による故障や不具合(掃除をしても直らない騒音など)の修理・交換費用は、原則として貸主が負担します。
これは、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも示されている一般的なルールです。
入居者が良かれと思って勝手に業者を呼んで修理・交換してしまうと、その費用を請求しても支払われないばかりか、契約違反として退去時にトラブルになる可能性があります。必ず先に相談し、貸主指定の業者に対応してもらうか、ご自身で業者を手配する許可を正式に得るようにしてください。
換気扇の風が吹くとうるさい時の対策方法と注意点:総まとめ
最後に、換気扇の風による騒音対策の要点をリスト形式でまとめます。ご自身の状況と照らし合わせ、適切な対策の参考にしてください。
- うるさい音の原因は「風の逆流(パタパタ音)」と「汚れ(ゴー音)」、「劣化(キーン音)」に大別される
- 「パタパタ」音は強風による正常音だが、「ゴー」「キーン」音はメンテナンスが必要な異常音のサイン
- 高気密なマンションでは室内外の「気圧差」で「ヒュー」音が鳴ることがある
- 気圧差による音は、給気口を開けるか窓を少し開けると改善する
- 「ゴー」「ブーン」音の対策は、フィルターとファンの徹底的な掃除が最も効果的
- 掃除の際は必ずブレーカーを切り、パーツを完全に乾燥させてから戻す
- 「キュルキュル」音は、掃除後にモーター軸へ潤滑油(グリス)を差すと改善する場合がある
- 浸透性潤滑スプレー(CRC 5-56など)の使用は避ける
- 「パタパタ」音には、換気扇カバーの隙間やシャッターの縁に「消音テープ(隙間テープ)」を貼るのが有効
- シャッターに貼るテープは、密閉性を妨げないよう「薄手」のものを選ぶ
- 賃貸物件では、原状回復できる「掃除」や「テープ対策」から試す
- レンジフードの騒音は、シロッコファンの油汚れやダンパーの不具合が原因のことが多い
- 「カラカラ」「ジー」音や、掃除しても直らない音は、モーターの寿命や故障の可能性が高い
- 修理や交換を依頼する際は、複数の業者から相見積もりを取る
- 賃貸物件の場合は、どのような音でも、まず管理会社や大家さんに相談する