二重窓でもうるさい？【プロが解説】原因と防音効果を高める方法

せっかく防音対策として二重窓を設置したのに、期待したほど静かにならず「二重窓でもうるさい」と感じて悩んでいませんか。

現在の住環境では、隣家のピアノの音や、犬の鳴き声、あるいはすぐ側を走る電車の騒音など、様々な音がストレスの原因になります。もしかしたら、DIYでポリカーボネートを使った二重窓に挑戦したり、手軽な対策として障子や透明な窓に貼る防音シートを試したりした結果、満足できずにいるのかもしれません。

この記事では、二重窓の防音効果がどのくらいあるのかという基本から、最強の防音性能を持つ内窓の選び方、そして気になる防音ガラスの値段や、防音二重窓の内窓設置にかかる費用、さらには防衛省の防音工事で利用できる補助金制度に至るまで、専門家の視点から詳しく解説します。この記事を読めば、二重窓の遮音効果をさらに高める方法が分かり、あなたの悩みを解決する最適な一手が見つかるはずです。

「二重窓でもうるさい」と感じる4つの理由と防音効果を高める方法

二重窓の防音はどのくらい効果があるか

二重窓を設置すると、音のエネルギーを約半分にできると言われています。これは、音の大きさを表すデシベル（dB）という単位で考えると、約40dBの騒音を軽減できる性能に相当します。

その理由は、既存の窓と新たに取り付けた内窓との間に生まれる「空気層」にあります。この空気層がクッションの役割を果たし、外から伝わってくる音の振動を和らげ、室内へ侵入する音を小さくします。

例えば、交通量の多い道路沿いの騒音が80dB程度だとします。これは人が「極めてうるさい」と感じるレベルです。しかし、適切な二重窓を設置することで、室内では40dB程度まで音を下げることが可能です。40dBは、図書館の中や静かな住宅地の夜に相当する静けさであり、日常生活で気になることはほとんどなくなります。

ただし、二重窓を設置すれば家の中が完全に無音になるわけではありません。あくまで騒音を「気にならないレベルまで低減させる」のが目的です。このため、元の騒音レベルや音の種類によっては、効果を実感しにくいケースも出てきます。

▼身近な音の騒音レベルの目安

このように、二重窓には十分な防音効果が期待できますが、期待値が高すぎると「思ったよりうるさい」と感じてしまう可能性がある点は理解しておく必要があります。

二重サッシの防音対策と電車の騒音

電車が近くを走る環境では、騒音に悩まされる方が少なくありません。二重サッシ（二重窓）は、電車の騒音対策として有効な手段の一つです。しかし、電車の騒音には二つの種類があり、それぞれで効果が異なります。

一つは、車輪とレールが擦れる「キーキー」という高音や、踏切の警報音といった、空気を伝わって耳に届く「空気音」です。これらの音に対して、二重窓は非常に高い効果を発揮します。前述の通り、窓の間に作られた空気層が音の伝達を大幅に遮断するため、室内はかなり静かになります。

一方で、もう一つの騒音は、電車の走行によって地面が揺れ、その振動が建物の基礎や壁を伝わって聞こえる「ゴトゴト」という低い「固体音」です。残念ながら、この固体音に対しては二重窓の効果は限定的です。なぜなら、音の侵入経路が窓ではなく、壁や床そのものであるためです。

したがって、二重窓を設置することで、踏切の警報音や甲高い走行音は気にならなくなっても、地響きのような重低音は残ってしまう可能性があります。これが、二重窓にしても電車の音がうるさいと感じる一因です。もし固体音による影響が大きい場合は、窓だけでなく、壁や床への防音対策も併せて検討する必要が出てきます。

二重窓の防音はピアノの音に有効か

ご自宅でピアノを演奏される方、または近隣のピアノの音が気になる方にとって、二重窓は非常に効果的な防音対策となります。ピアノの音は、そのほとんどが空気を振動させて伝わる「空気音」だからです。

ピアノの音は、低音から高音まで幅広い周波数帯域を持っていますが、二重窓の空気層はこれらの音を効率良く減衰させます。特に、気密性の高い樹脂製のサッシと、厚みの異なるガラスを組み合わせた内窓を設置することで、音漏れを大幅に防ぐことが可能です。

例えば、ご自身のピアノの音が外に漏れるのを防ぎたい場合、二重窓にすることで近隣への迷惑を心配することなく演奏に集中しやすくなります。逆に、外から聞こえてくるピアノの音に悩まされている場合も、二重窓を設置すれば室内ではほとんど気にならないレベルまで音を小さくできます。

ただし、注意点も存在します。グランドピアノのように床に直接設置する楽器の場合、打鍵による振動が床を伝わって「固体音」として階下や隣室に響くことがあります。この振動音は二重窓では防げません。そのため、完璧を期すのであれば、防音マットや防振ステージをピアノの下に敷くといった床への対策も併用するのが理想的です。

犬の鳴き声への防音対策で窓にできる事

犬の鳴き声、特に「ワンワン」という甲高い声は、周波数も高く、近隣トラブルの原因になりやすい騒音の一つです。この犬の鳴き声に対しても、二重窓は優れた防音効果を発揮します。

犬の鳴き声も、ピアノの音と同様に「空気音」が主体です。二重窓を設置することで、窓の気密性が格段に向上し、音の出入り口である隙間がなくなります。さらに、内窓と外窓の間の空気層が音を遮断するため、室内の鳴き声が外に漏れにくくなり、また外の犬の鳴き声が室内に入ってくるのも大幅に軽減されます。

特に、もともと設置されている窓が、気密性の低いアルミサッシの一枚ガラスである場合、効果は絶大です。リフォーム後は、これまで聞こえていた鳴き声が半分以下に感じられるようになることも少なくありません。

しかし、これも他の騒音と同様に、全ての音を完全にシャットアウトできるわけではありません。至近距離で長時間吠え続けられるようなケースでは、ある程度の音は聞こえてしまう可能性があります。もっとも、その音量も大幅に小さくなるため、ストレスはかなり軽減されるでしょう。愛犬家の方も、ご近所への配慮として内窓を設置するケースは非常に多く、効果的な対策の一つと言えます。

DIYのポリカーボネート二重窓の防音性

近年、ホームセンターやインターネットで販売されているポリカーボネート（中空プラダン）と樹脂製レールを使ったDIYの二重窓キットが人気です。費用を抑えて手軽に設置できるのが魅力ですが、プロが施工するメーカー製の二重窓と比較した場合、防音性能には大きな差があることを理解しておく必要があります。

DIYキットの最大の弱点は、「気密性の確保が難しい」という点にあります。防音において最も重要なのは、音の侵入経路となる隙間をいかに無くすかです。メーカー製の二重窓は、歪みのない精巧な樹脂フレームと気密材によって、窓枠にぴったりと設置され、高い気密性を実現します。

一方、DIYキットでは、自分で採寸し、カットして組み立てるため、どうしてもミリ単位の隙間が生まれがちです。また、ポリカーボネート自体も、ガラスに比べて質量が軽く、音を跳ね返す力が弱いため、遮音性能そのものが劣ります。

もちろん、DIYの二重窓でも、一枚窓の状態よりは断熱性やある程度の防音性の向上は期待できます。しかし、「電車の音がうるさい」「ピアノの音漏れを防ぎたい」といった本格的な防音を目的とする場合、DIYキットでは性能が不足し、「結局うるさいままだった」と後悔する可能性が高いです。費用はかかりますが、確実な防音効果を求めるのであれば、専門業者によるメーカー製の二重窓の設置を検討するのが賢明です。

「二重窓でもうるさい」を解決する具体的な対処法

内窓で最強の防音効果を発揮するコツ

すでに二重窓が設置されている、あるいはこれから設置する上で、最強の防音効果を求めるのであれば、いくつかの重要なコツがあります。これらを意識することで、性能を最大限に引き出すことが可能です。

ガラスの組み合わせを工夫する

最強の防音効果を得る上で最も重要なのが、ガラスの選び方です。ポイントは「異なる厚みのガラスを組み合わせる」ことと、「特殊な機能を持つガラスを選ぶ」ことです。

外窓と内窓のガラスの厚みが同じだと、特定の周波数の音に対して共鳴してしまい、かえって防音性能が落ちる「共鳴現象」が起きることがあります。これを防ぐため、例えば外窓が3mm厚のガラスなら、内窓には5mmや6mm厚のガラスを選ぶなど、厚さを変えるのが効果的です。

さらに高い性能を求めるなら、「合わせガラス」や「真空ガラス」の採用が鍵となります。合わせガラスは、2枚のガラスの間に特殊な防音フィルムを挟み込んだもので、音を熱エネルギーに変換して減衰させるため、非常に高い遮音性を誇ります。真空ガラスは、2枚のガラスの間が真空層になっており、音を伝える媒体である空気が無いため、防音・断熱ともに最高クラスの性能を発揮します。

空気層を広く取る

内窓と外窓の間の「空気層」は、広ければ広いほど防音効果が高まります。一般的に、この空気層が7cm以上あると、高い効果が得られるとされています。窓枠の奥行きに余裕があれば、できるだけ離して内窓を設置するのが理想です。奥行きが足りない場合は、「ふかし枠」という部材を使って設置スペースを広げることもできます。

気密性の高い樹脂サッシを選ぶ

サッシの素材も防音性能を左右します。従来のアルミサッシは加工しやすく安価ですが、隙間が生まれやすく気密性が低いのが弱点です。一方、樹脂サッシはフレームの密閉度が高く、音漏れをしっかりと防ぎます。現在主流の内窓製品のほとんどは樹脂サッシを採用しており、防音性能の向上に大きく貢献しています。

これらの点を踏まえ、専門の施工業者と相談しながら、ご自身の環境と予算に合った最適な組み合わせを選ぶことが、最強の防音窓を実現する近道です。

性能を左右する防音ガラスの値段と選び方

二重窓の効果は、組み込むガラスの種類によって大きく変わります。そして、性能が高くなるほど値段も上がるため、目的と予算に応じた適切な選択が求められます。

ここでは、代表的なガラスの種類と、その性能、価格帯の目安を比較します。

▼ガラスの種類別 性能・価格比較表

選び方のポイント

• 防音を最優先する場合: 迷わず「合わせガラス」か「真空ガラス」を選びましょう。特に、車の走行音や電車の音など、特定の騒音に悩んでいる場合は、その周波数帯に特化した防音合わせガラスが最適です。
• 防音と断熱の両方を求める場合: 「真空ガラス」が最もおすすめです。価格は高くなりますが、夏は涼しく冬は暖かいという快適な室内環境も手に入り、光熱費の削減にも繋がるため、長期的に見ればコストパフォーマンスは高いと言えます。
• コストを抑えつつ効果を出したい場合: 「厚みの異なる単板ガラス」の組み合わせが良い選択肢です。例えば、外窓が3mmなら内窓に5mmか6mmの単板ガラスを設置するだけでも、複層ガラス（ペアガラス）より高い防音効果が期待できます。

ペアガラスは断熱目的で選ばれることが多いですが、防音の観点では「太鼓と同じ原理」で音が共鳴し、特に低音域で性能が低下する「低音域共鳴透過現象」が起こりやすいため、防音目的での採用は避けた方が無難です。

手軽な透明の窓に貼る防音シートの効果

窓に直接貼り付けるタイプの透明な防音シートは、工事不要で手軽に試せる対策として関心を集めています。しかし、その効果については、過度な期待は禁物です。

これらのシートの主な役割は、ガラスの振動をわずかに抑える「制振効果」です。ガラスが音を受けてビリビリと震えるのを少しだけ抑制することで、音の響きを和らげるという仕組みです。このため、効果が感じられるのは、窓ガラス自体が振動して発生する「鳴き」のような音に対してであり、外部から侵入してくる騒音そのものを大幅にカットする力はありません。

例えば、トラックが通過した際に窓がガタガタと鳴る音は、多少軽減される可能性があります。しかし、車のエンジン音や人の話し声といった「空気音」を遮断する性能はほとんど期待できません。

メリットとしては、透明なので景観を損なわない点や、誰でも簡単に貼り付けられる手軽さが挙げられます。一方、デメリットは、本格的な防音効果は得られない点、そして製品によっては気泡が入ったり、剥がす際に糊が残ったりする可能性がある点です。

要するに、防音シートは「気休め程度の対策」と考えるのが妥当です。深刻な騒音問題の解決策にはならず、あくまで補助的なもの、あるいは本格的な対策を行う前のお試し、といった位置づけで捉えるべきでしょう。

障子に貼るタイプの防音シートの限界

和室の防音で悩まれている方の中には、障子に貼るタイプの防音シートを検討される方もいます。これも窓に貼るシートと同様に、効果は非常に限定的であると言わざるを得ません。

障子用の防音シートは、通常の障子紙よりは密度が高い素材で作られていますが、その質量はガラスに遠く及びません。音を遮る能力（遮音性能）は、物体の質量に比例するため、紙に近い素材で騒音を防ぐことには元々無理があります。

さらに決定的なのは、障子そのものの構造です。障子の木枠は、アルミサッシ以上に隙間が多く、気密性という概念がありません。音が自由に出入りできる隙間だらけの状態では、たとえ障子紙の性能を多少上げたところで、音は隙間から回り込んで侵入してしまいます。

これらの理由から、障子に防音シートを貼っても、体感できるほどの防音効果を得ることは極めて困難です。隣の部屋の話し声が少しだけこもって聞こえるようになる、といった程度の変化しか期待できないでしょう。

和室の防音を本格的に考えるのであれば、障子を取り払い、その場所に気密性の高い内窓を設置するのが唯一かつ最善の解決策です。最近では、和室の雰囲気に合わせた木目調のフレームや、和紙調のガラスなども選べるため、部屋のイメージを損なうことなく高い防音性能を実現できます。

防音二重窓・内窓の費用と防衛省の防音工事補助金

防音を目的とした二重窓（内窓）の設置には、当然ながら費用がかかります。しかし、国や自治体の補助金制度をうまく活用することで、自己負担を大きく軽減できる可能性があります。

二重窓の設置費用の目安

内窓の設置費用は、窓のサイズ、選ぶフレームの種類、そして最も大きく影響するガラスの種類によって変動します。一般的な掃き出し窓（幅180cm × 高さ180cm）を例にすると、費用相場は以下のようになります。

• 単板ガラスを入れた場合: 約5万円～8万円
• 複層ガラス（ペアガラス）を入れた場合: 約7万円～12万円
• 合わせガラスや真空ガラスを入れた場合: 約10万円～20万円以上

これには、製品代の他に専門業者による施工費も含まれます。複数の業者から見積もりを取り、比較検討することが大切です。

 防衛省による住宅防音工事の補助金

お住まいが自衛隊や在日米軍の飛行場の周辺にあり、国が定めた騒音コンター（騒音レベルの分布図）の区域内に指定されている場合、防衛省が実施する「住宅防音工事」の補助対象となる可能性があります。

この制度は、航空機の騒音による障害を軽減することを目的としており、工事費用の大部分（場合によっては全額）が国によって補助されます。対象となる工事には、防音サッシや防音ドアへの交換、換気扇や空調設備の設置などが含まれます。

対象となるかどうかは、お住まいの地域を管轄する地方防衛局に問い合わせることで確認できます。ご自宅が対象区域内にある場合は、非常に手厚い補助を受けられる可能性があるため、必ず一度確認してみることをお勧めします。

その他のリフォーム補助金

防衛省の補助対象外であっても、他の補助金制度が利用できる場合があります。代表的なのが、経済産業省や環境省が主導する「先進的窓リノベ事業」などの断熱リフォームに関する補助金です。

これらの補助金は、主目的が「省エネ・断熱」ですが、補助対象となる高性能な窓（真空ガラスや高断熱の合わせガラスなど）は、必然的に高い防音性能も兼ね備えています。つまり、断熱リフォームとして申請しつつ、結果的に防音性能も向上させることができるわけです。

補助金の制度は年度によって内容や予算が変動します。リフォームを検討する際は、施工を依頼する業者に、現在利用可能な補助金がないか相談してみると良いでしょう。

まとめ：「二重窓でもうるさい」と感じたら

ここまで、「二重窓でもうるさい」と感じる原因から、その具体的な解決策までを詳しく解説してきました。最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。