冬の暖房について、電気ファンヒーターとエアコンのどちらが経済的か、多くの方が悩む問題です。暖房の電気代が気になるなら取り入れるべき節約・節電方法はたくさんありますが、まずはそれぞれの特徴を理解することが大切です。
この記事では、消費電力を基に電気ファンヒーターの電気代の目安とエアコンの電気代の目安を算出し、1時間・1日・1ヶ月の電気を徹底比較します。また、ファンヒーターの電気代を節約するにはどうすれば良いか、エアコンの電気代を節約するにはどんな工夫があるかについても詳しく解説します。
暖房器具で電気代が一番高いのは何か、逆に暖房器具で電気代が一番安いのは何かといった、よくある質問(FAQ)にもお答えし、あなたに最適な暖房器具の選択をサポートします。
目次
電気ファンヒーターとエアコンどちらが経済的か比較
- 消費電力から見る電気代の違い
- 電気ファンヒーターの電気代の目安
- エアコンの電気代の目安を解説
- 電気ファンヒーターと他暖房の比較
- 1時間・1日・1ヶ月の電気を徹底比較
消費電力から見る電気代の違い
暖房器具の電気代を左右する最も大きな要因は、消費電力(W)です。消費電力が大きいほど、また使用時間が長いほど電気代は高くなります。電気代は基本的に「消費電力(kW) × 使用時間(h) × 1kWhあたりの電気料金単価(円)」で計算されます。
エアコンと電気ファンヒーターでは、この消費電力の特性が異なります。電気ファンヒーターは、スイッチを入れてから設定した強さでほぼ一定の電力を消費し続けるのが特徴です。一方で、エアコンは部屋が暖まるまでの起動時に最も多くの電力を消費し、設定温度に達した後は室温を維持するために消費電力を抑えて運転します。
このため、短時間の使用であれば電気ファンヒーターの方が安く済むことがありますが、リビングなどで長時間使用する場合は、自動で消費電力を調整してくれるエアコンの方が経済的になる傾向があります。
電気ファンヒーターの電気代の目安
電気ファンヒーターは、内蔵されたセラミックや電熱線を電気で加熱し、その熱をファンで送り出す仕組みです。手軽に持ち運べるコンパクトなモデルが多く、トイレや脱衣所などの狭い空間を素早く暖めるのに適しています。
電気ファンヒーターの電気代は、製品の消費電力によって決まります。例えば、パナソニック社のセラミックファンヒーター「DS-FN1200」を例に挙げると、消費電力は強運転時で1170W、弱運転時で640Wです。
これを基に1時間あたspired電気代を計算(電力料金目安単価31円/kWhとして)すると、以下のようになります。
- 強運転時(1.17kW):約36.27円
- 弱運転時(0.64kW):約19.84円
このように、1時間あたり約20円から37円が目安となります。部屋全体を暖めるほどのパワーはありませんが、足元など局所的に使う分には便利な暖房器具です。
エアコンの電気代の目安を解説
エアコンは、ヒートポンプ技術を利用して室内の空気を暖める暖房器具です。部屋全体を効率良く暖める能力に長けており、近年のモデルは省エネ性能が非常に高くなっています。
前述の通り、エアコンは運転状況によって消費電力が大きく変動します。シャープ社の「AY-P22DM」モデルを例に見ると、暖房時の消費電力は150Wから980Wの範囲で変動します。
仮に平均的な消費電力で運転した場合の電気代を計算してみましょう。
- 平均消費電力470W(0.47kW)の場合:1時間あたり約14.57円
起動時には最大消費電力に近い状態で稼働しますが、室温が安定すれば最小消費電力で運転するため、長時間使うほど1時間あたりの平均電気代は安くなる傾向にあります。リビングなど広い空間で継続的に使用する場合には、ヒーター類よりも経済的な選択肢となり得ます。
電気ファンヒーターと他暖房の比較
「ヒーター」と一括りにされがちですが、電気ファンヒーター以外にも様々な種類の暖房器具が存在します。それぞれにメリット・デメリットがあり、電気代も大きく異なります。ここでは、代表的な暖房器具の特徴と電気代を比較してみましょう。
暖房器具の種類 | 暖房能力 | 暖まりやすさ | 1時間あたりの電気代(目安) | 特徴 |
セラミックファンヒーター | 局所的 | 速い | 約20円~37円 | 空気が汚れにくいが、部屋全体の暖房は不向き |
石油ファンヒーター | 部屋全体 | 速い | 約0.3円~0.6円 + 灯油代 | パワフルだが給油の手間と換気が必要 |
電気ストーブ | 局所的 | 非常に速い | 約10円~36円 | 体の芯から温まるが、暖房範囲は狭い |
オイルヒーター | 部屋全体 | 遅い | 約37円 | 空気を汚さず乾燥しにくいが、電気代は高め |
エアコン | 部屋全体 | やや遅い | 約5円~31円 | 省エネ性能が高く、長時間利用で経済的 |
このように、部屋全体を暖める能力を持つ石油ファンヒーターやエアコンと、脱衣所や足元などスポット的に使用するのが得意なセラミックファンヒーターや電気ストーブでは、得意な用途が全く異なります。電気代だけでなく、暖めたい場所や時間に合わせて選ぶことが大切です。
1時間・1日・1ヶ月の電気を徹底比較
暖房器具の電気代をより具体的にイメージするために、セラミックファンヒーター(強運転時)とエアコン(平均運転時)を例に、使用時間ごとの料金をシミュレーションしてみましょう。
ここでは、1日8時間、30日間使用した場合を想定して計算します。
暖房器具 | 1時間 | 1日(8時間) | 1ヶ月(30日) |
セラミックファンヒーター(1170W) | 約36.27円 | 約290.16円 | 約8,704.8円 |
エアコン(平均470W) | 約14.57円 | 約116.56円 | 約3,496.8円 |
上記の表からも分かる通り、長時間使用した場合、電気代の差は非常に大きくなります。1時間だけの使用であればその差は約22円ですが、1ヶ月使い続けると5,000円以上の差額が発生する計算です。
この結果から、在宅ワークや休日などで一日中暖房を使うような場合は、エアコンを主力の暖房器具として使用する方が、経済的な負担を大幅に軽減できると考えられます。
電気ファンヒーターとエアコンどちらが経済的?節約術や節電術
- ファンヒーターの電気代を節約するには?
- エアコンの電気代を節約するには?
- 暖房の電気代が気になるなら取り入れるべき節約・節電方法
- 一番高い・安い暖房器具の電気代は?
- よくある質問(FAQ)
ファンヒーターの電気代を節約するには?
電気ファンヒーターは手軽さが魅力ですが、電気代が高くなりがちです。しかし、使い方を工夫することで消費電力を抑えることが可能です。
まず、メインの暖房として長時間使用するのを避け、補助的な役割で使うことが基本となります。例えば、エアコンで部屋全体が暖まるまでの間の「つなぎ」として使用したり、エアコンのない脱衣所やキッチンで短時間だけ使ったりするのが効果的です。
また、省エネ機能が搭載されているモデルを選ぶのも一つの手です。人感センサー付きのモデルであれば、人がいないときには自動で運転を停止してくれるため、無駄な電力消費を防げます。タイマー機能を活用し、消し忘れを防ぐことも節約に繋がります。
エアコンの電気代を節約するには?
エアコンは省エネ性能が高いですが、さらに電気代を抑えるためのポイントがいくつかあります。
最も効果的なのは、設定温度を適切に管理することです。環境省は冬の暖房時の室温を20℃にすることを推奨しており、設定温度を1℃下げるだけで約10%の消費電力削減に繋がると言われています。厚着をしたり、ひざ掛けを使ったりして、体感温度を上げる工夫をしましょう。
次に、風量の設定は「自動運転」がおすすめです。弱風でゆっくり設定温度を目指すよりも、自動運転で一気に部屋を暖め、その後は弱い運転で室温を維持する方が、結果的に消費電力を抑えられます。暖かい空気は上に溜まりやすいため、風向きを「下向き」や「スイング」に設定することも、部屋全体を効率よく暖める上で有効です。
そして、フィルターの定期的な掃除も欠かせません。フィルターが目詰まりすると暖房効率が低下し、余計な電力を消費してしまいます。2週間に1回程度を目安に掃除を心がけてください。
暖房の電気代が気になるなら取り入れるべき節約・節電方法
個々の暖房器具の使い方を見直すだけでなく、住環境を整えることも暖房費の節約には欠かせません。暖房の電気代が気になるなら取り入れるべき節約・節電方法として、以下の三点を意識すると良いでしょう。
一つ目は、サーキュレーターや扇風機の併用です。暖かい空気は天井付近に溜まる性質があるため、サーキュレーターで空気を循環させることで室内の温度ムラがなくなり、足元の冷えを解消できます。結果として、エアコンの設定温度を必要以上に上げずに済みます。
二つ目は、加湿です。湿度が上がると体感温度も上昇するため、加湿器を併用することで、同じ室温でも暖かく感じられます。濡れタオルを部屋に干すだけでも効果が期待できます。
三つ目は、窓の断熱対策です。室内の暖かい空気の約50%は窓から逃げていくと言われています。厚手のカーテンや断熱シートを活用して、外からの冷気の侵入を防ぎ、室内の熱を逃がさないようにすることが、暖房効率を大きく向上させる鍵となります。
一番高い・安い暖房器具の電気代は?
暖房器具の中で電気代が一番高いのは何か、そして一番安いのは何か、というのは多くの方が気になる点です。
一般的に、部屋全体を暖める能力を持つ暖房器具の中で電気代が高い傾向にあるのは、オイルヒーターです。じんわりと部屋全体を暖め、空気を汚さないメリットはありますが、消費電力が大きく、暖まるまでに時間もかかるため、ランニングコストは高くなりがちです。
一方で、暖房器具で電気代が一番安いのは、限定された範囲を暖める器具であるこたつや電気毛布です。こたつは布団の中の狭い空間だけを暖めるため、非常に少ない消費電力で済みます。ただし、部屋全体を暖めることはできないため、他の暖房器具との併用が基本となります。
部屋全体を暖める器具に限定すると、最新の省エネエアコンが最も経済的であると言えるでしょう。
よくある質問(FAQ)
ここでは、電気ファンヒーターとエアコンの電気代に関するよくある質問にお答えします。
Q. 暖房はつけっぱなしと、こまめに消すのではどちらが節電になりますか?
A. エアコンの場合、30分程度の短い外出であれば、つけっぱなしの方が節電になることが多いです。エアコンは起動時に最も多くの電力を消費するため、頻繁にオンオフを繰り返すとかえって電気代が高くなることがあります。一方で、電気ファンヒーターは起動時の消費電力が突出して高いわけではないため、使わない時はこまめに消す方が経済的です。
Q. 古いエアコンを使い続けると電気代は高くなりますか?
A. はい、高くなる可能性が非常に高いです。エアコンの省エネ性能は年々向上しており、経済産業省のデータによると、10年前の製品と最新モデルとでは、期間消費電力量に大きな差があります。もし10年以上前のエアコンをお使いであれば、最新の省エEネモデルに買い替えるだけで、大幅な電気代の節約が期待できます。
電気ファンヒーターとエアコンどちらが経済的か:総まとめ
ここまで様々な角度から比較してきましたが、電気ファンヒーターとエアコンのどちらが経済的かについての結論をまとめます。
使い方や暖める場所によって最適な選択は異なりますが、リビングのような広い空間で長時間使用するという一般的なケースにおいては、エアコンの方が経済的です。
電気ファンヒーターは購入費用が安く、設置も手軽ですが、電気代は比較的高めです。そのため、エアコンのない脱衣所やトイレ、デスクの足元など、局所的かつ短時間の使用に限定するのが賢い使い方と言えます。
一方で、エアコンは初期費用こそかかりますが、ランニングコストが安く、部屋全体を快適な温度に保つ能力に長けています。特に近年の省エネ性能の向上は著しく、冬のメイン暖房として最も経済的な選択肢の一つです。
したがって、両者の特性を理解し、適材適所で使い分けることが、冬の暖房費を賢く節約するための鍵となります。
- 長時間・広範囲の暖房はエアコンが経済的
- 短時間・局所的な暖房は電気ファンヒーターが手軽
- 電気代は消費電力(W)で決まる
- エアコンは起動時に最も電力を消費し、その後は省エネ運転を行う
- 電気ファンヒーターはほぼ一定の電力を消費し続ける
- 1ヶ月の電気代シミュレーションではエアコンの方が5,000円以上安い
- エアコンの節約には「自動運転」と「下向き送風」が効果的
- フィルター掃除は2週間に1回が目安
- ファンヒーターはメイン暖房ではなく補助暖房として使用するのが賢明
- サーキュレーターの併用で室内の温度ムラをなくす
- 加湿器で湿度を上げると体感温度が上昇する
- 窓の断熱対策は暖房効率を大きく向上させる
- 最も電気代が安い暖房器具はこたつや電気毛布
- 部屋全体を暖める器具では最新の省エネエアコンが最も経済的
- 両者の特性を理解し、賢く使い分けることが節約の鍵となる