「給湯温度を40度にしてはいけない」という話を聞いて、ご自宅の設定に不安を感じていませんか。
光熱費の節約を考えて実践している方も多いエコキュートの給湯温度40度設定ですが、給湯器が40度で壊れる、あるいは給湯器を40度以下にすると壊れるって本当?といった疑問が浮かびます。
特にサーモスタット混合栓の給湯温度とガス代の関係や故障リスクについては、正しい情報を知っておきたいところです。
また、給湯温度は何がいいのか、45度や50度が適切なのか、リンナイやノーリツといった主要メーカーの給湯器設定温度の推奨は何度なのか、という点も気になります。
さらに、パナソニック製エコキュートのおすすめ給湯温度や、エコキュートの給湯温度を60度に設定した場合の電気代、そもそもエコキュートの給湯温度50度はなぜ推奨されるのかなど、エコキュートの給湯温度節約術についても関心が高いでしょう。
この記事では、水栓の種類と適切な温度設定について詳しく解説し、給湯温度40度にしてはいけないと言われる本当の理由と、光熱費を賢く抑えるための最適な設定温度について、専門的な視点から徹底的に解き明かします。
目次
給湯温度40度にしてはいけないと言われる理由は?サーモスタット混合栓との関係
- 給湯器を40度以下にすると壊れるって本当?
- なぜ給湯器が40度で壊れると言われるのか
- サーモスタット混合栓の給湯温度とガス代
- 水栓の種類と適切な温度設定について
- 給湯温度は何度がいい?おすすめ設定温度は?
- 故障リスクについて
給湯器を40度以下にすると壊れるって本当?
「給湯器の温度を40度以下に設定すると壊れやすくなる」という話を耳にして、不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。結論から申し上げますと、給湯器の設定温度を40度にしたことが直接的な原因となって、直ちに故障するということはありません。
しかし、この話には一定の根拠があり、特に「サーモスタット混合水栓」を使用しているご家庭では注意が必要です。低温設定で使い続けることが、水栓や給湯器に間接的な負荷をかけ、結果的に寿命を縮める可能性が指摘されています。
したがって、「絶対に壊れる」わけではありませんが、機器を長持ちさせる観点からは、40度以下の設定が常に最適とは言えないのが実情です。次の項目で、なぜそのような負荷がかかるのかを詳しく解説します。
なぜ給湯器が40度で壊れると言われるのか
給湯器が40度設定で壊れると言われる主な理由は、サーモスタット混合水栓の仕組みにあります。サーモスタット混合水栓は、設定した吐水温度を一定に保つため、内部で給湯器から送られてくるお湯と水道水を自動で混合しています。
例えば、給湯器の設定が50度や60度と高温の場合、40度のお湯を出そうとすると、水栓は十分な量の水道水を混ぜて温度を調整します。この動作は水栓にとってスムーズなものです。
ところが、給湯器の設定が40度で、吐水温度を38度にしたい場合、水栓はごくわずかな量の水道水を混ぜて2度の温度差を作らなければなりません。この微妙な調整は、水栓内部の温度を調節する弁(サーモユニット)に大きな負担をかけます。バルブが常に細かく動き続ける状態になり、部品の摩耗を早めてしまうのです。
このように、低温設定はサーモスタット混合水栓に過剰な負荷をかけ続けることになり、これが「壊れやすくなる」という話の根拠となっています。
サーモスタット混合栓の給湯温度とガス代
給湯温度を低く設定すれば、その分ガス代が安くなると思われがちですが、サーモスタット混合水栓を使用している場合は、かえってガス代が高くつくという逆転現象が起こることがあります。
その理由は、主に二つ考えられます。一つ目は、お湯の使用量が増えることです。給湯器を40度に設定しても、蛇口から出るお湯は配管を通る間に少し冷めるため、実際には38度程度になっていることが少なくありません。ぬるく感じるためシャワーの時間が長くなったり、設定温度を少し上げたりすることで、結果的にガスと水の使用量が増えてしまいます。
二つ目は、追い焚きの回数が増えることです。特に冬場は、40度で浴槽にお湯を張ってもすぐに冷めてしまいます。その結果、追い焚き機能を使う頻度が増え、余分なガスを消費することにつながります。
これらの理由から、給湯器の設定を50度程度にしておき、手元の水栓で素早く適温に調整する方が、トータルのガス使用量を抑えられるケースが多いのです。
水栓の種類と適切な温度設定について
ご家庭で使用されている水栓の種類によって、適切な給湯温度の設定は異なります。すべての水栓で高温設定が必須というわけではありません。
水栓の種類 | 特徴 | 推奨される給湯温度 |
サーモスタット混合水栓 | 温度設定ハンドルで自動的にお湯と水を混合し、一定の温度を保つ。浴室のシャワーに多い。 | 50℃~60℃ |
シングルレバー混合水栓 | 一つのレバーで水量と温度を調節する。キッチンや洗面所に多い。 | 50℃~60℃ |
2ハンドル混合水栓 | お湯と水の2つのハンドルで、手動で温度と水量を調節する。 | 使用したい温度(40℃前後) |
単水栓 | お湯だけ、または水だけが出るシンプルな蛇口。 | 使用したい温度(40℃前後) |
このように、お湯と水を混ぜて温度を調節するサーモスタット式やシングルレバー式では、給湯器の温度を吐水したい温度より10度以上高く設定しておくことが、機器への負荷を減らし、安定した温度を保つために推奨されます。
一方で、2ハンドル混合水栓や単水栓の場合は、給湯器の設定温度がそのまま吐水温度に近くなるため、40度程度の設定でも問題ありません。
給湯温度は何度がいい?おすすめ設定温度は?
それでは、結局のところ給湯温度は何℃に設定するのが最適なのでしょうか。前述の通り、水栓の種類にもよりますが、多くの住宅設備メーカーやガス会社が一般的に推奨しているのは「50℃から60℃」の範囲です。
この温度設定には、主に3つの理由があります。
- サーモスタット混合水栓の安定動作のため給湯温度と使用温度に適切な差(約10℃以上)を持たせることで、水栓内部での温度調整がスムーズに行われ、機器への負荷が軽減されます。
- 配管内での温度低下を考慮するため給湯器から蛇口までの距離が長い場合や、外気温が低い冬場には、お湯が配管を通る間に数度温度が下がります。あらかじめ高めに設定しておくことで、使いたい場所で快適な温度を確保できます。
- 衛生面のリスクを低減するため45℃未満のぬるいお湯は、レジオネラ菌などの雑菌が繁殖しやすい温度帯です。給湯配管内での菌の増殖を防ぐためにも、50℃以上の設定が衛生的とされています。
これらの理由から、特にこだわりがなければ50℃に設定し、冬場などお湯がぬるく感じる場合は60℃に近づける、といった使い方が合理的です。ただし、45℃程度でも水栓への負荷は大きく軽減されるため、火傷のリスクを考慮したい場合は一つの選択肢となります。
故障リスクについて
給湯器の設定温度を40度のような低めに設定することが、直接的な原因となって直ちに機器が故障するわけではありません。しかし、そのような使い方を長期間続けると、給湯器本体、そして特に浴室などで使用されるサーモスタット混合水栓の故障リスクを高める可能性があるため、注意が必要です。
その理由は、主に機器にかかる「隠れた負荷」が増加することにあります。
サーモスタット混合水栓への負荷
浴室のシャワーなどで一般的に使われるサーモスタット混合水栓は、設定した温度のお湯を出すために、内部で給湯器から送られてくるお湯と水道水を自動で混ぜ合わせています。
例えば、給湯器の温度が推奨される50度や60度の場合、40度のお湯を出すためには十分な量の水道水を混ぜて温度を下げます。この動作は、水栓の設計上、スムーズで負担の少ないものです。
一方で、給湯器の温度が40度で、シャワーの温度を38度に設定したとします。この場合、水栓はわずか2度の差を埋めるために、ごく少量の水道水を非常に繊細に混ぜ合わせなければなりません。この絶え間ない微調整は、温度を感知して調節する水栓の心臓部(サーモユニット)に常に負担をかけ続けることになります。この細かく頻繁な動作が部品の摩耗を早め、結果として水栓の寿命を縮める一因となるのです。
給湯器本体への間接的な負荷
給湯器本体への影響は、より間接的です。40度に設定すると、特に冬場など外気温が低い時期には、蛇口から出るお湯がぬるく感じられがちです。
すると、無意識のうちにシャワーの使用時間が長くなったり、お風呂が冷めやすいために追い焚きの回数が増えたりします。これらの「使用時間の増加」や「再加熱の頻発」は、給湯器の稼働時間を延ばし、バーナーやポンプといった部品にかかる負荷を増大させます。節約のつもりが、かえって機器を酷使する結果となり、これもまた故障リスクを高める要因となり得ます。
衛生面のリスクも
また、機械的な故障とは異なりますが、45度未満のぬるい温度は、配管内でレジオネラ菌などの雑菌が繁殖しやすい環境を作り出してしまいます。衛生面を健全に保つという観点からも、低温設定には注意が必要と言えるでしょう。
このように、40度設定は目に見えない形で水まわりの設備に負荷をかけ、長期的に見れば修理や交換の時期を早めてしまう可能性があります。
給湯温度を40度にしてはいけない理由と光熱費の関係
- 給湯温度50度のガス代は高くなるのか
- エコキュート給湯温度50度はなぜ推奨?
- エコキュートの給湯温度で節約する方法
- リンナイ給湯器の設定温度で推奨されるのは
給湯温度50度のガス代は高くなるのか
給湯器の設定温度を40度から50度に上げると、単純に考えてガス代が高くなるのではないかと心配になるのは当然です。確かにお湯を10度高く沸かす分、瞬間的なガスの消費量は増加します。
しかし、光熱費はトータルの使用量で決まるため、必ずしも「設定温度が高い=ガス代が高くなる」とは限りません。むしろ、50度設定の方が結果的にガス代を節約できるケースがあります。
前述の通り、40度設定ではお湯がぬるく感じられ、シャワー時間が長くなったり、追い焚きが増えたりする傾向があります。これに対し、50度設定であれば、手元の水栓で素早く快適な温度のお湯が出せるため、お湯を流しっぱなしにする時間が短縮されます。
例えば、冬場に40度設定で5分間シャワーを浴びるのと、50度設定で3分間浴びるのでは、後者の方がガス使用量も水道使用量も少なく済む可能性があります。
ただし、高温設定には火傷のリスクが伴います。特に小さなお子様やご高齢の方がいるご家庭では、チャイルドロック機能を利用するなど、安全面に十分配慮することが大切です。
エコキュート給湯温度50度はなぜ推奨?
ガス給湯器だけでなく、電気でお湯を沸かすエコキュートにおいても、給湯温度は50度から60度の設定が推奨されています。エコキュートは貯湯式の給湯器であり、ガス給湯器とは異なる理由からも高温設定が望ましいとされています。
最も大きな理由は衛生面の管理です。エコキュートは、深夜の安い電力を使って沸かしたお湯を大きなタンクに貯めておき、日中に使用します。このタンク内のお湯の温度が低いと、レジオネラ菌などの雑菌が繁殖する温床になりかねません。一般的にレジオネラ菌は30度〜45度で最も繁殖しやすく、50度以上で死滅し始めると言われています。タンク内を清潔に保ち、安全なお湯を使い続けるために、50度以上の設定が推奨されるのです。
また、エコキュートもガス給湯器と同様に、お湯を使う際にはタンクの高温のお湯と水道水を混ぜて適温にします。タンク内の温度が高ければ高いほど、少ないお湯の量で済むため、結果としてタンクのお湯を効率的に使うことにもつながります。
エコキュートの給湯温度で節約する方法
エコキュートの電気代を節約するためには、給湯温度の設定に加えて、その特性を理解した使い方が鍵となります。
追い焚きより「高温足し湯」を活用する
お風呂のお湯がぬるくなった場合、「追い焚き」機能を使うと、タンク内のお湯の熱を利用して浴槽のお湯を温め直します。この時、タンクのお湯の温度が下がってしまうため、再度沸かし直すために余分な電力を消費することがあります。
一方、「高温足し湯」は、タンク内の熱いお湯をそのまま浴槽に加える機能です。こちらの方が効率的に浴槽の温度を上げることができ、電気代の節約につながるケースが多いです。
季節ごとに設定を見直す
夏場は水道水の温度も高いため、給湯器の設定温度を少し低め(例:50度)にしても快適に使えることが多いです。逆に冬場は水道水が冷たく、配管も冷えているため、設定を高め(例:60度)にしないとぬるく感じることがあります。季節に応じて設定をこまめに変更することで、無駄な電力消費を抑えることができます。
リンナイ給湯器の設定温度で推奨されるのは
国内大手給湯器メーカーであるリンナイも、公式サイトや取扱説明書において、給湯温度を50度から60度に設定することを推奨しています。
その主な理由は、これまで述べてきた通り、サーモスタット混合水栓などの混合水栓を安定して作動させるためです。リンナイは、「快適な吐水温度を得るためには、給湯設定温度を使用したい温度より10℃程度高く設定してください」と具体的に案内しています。
これは、給湯器から蛇口までの配管の長さや断熱状況によってお湯が冷めることを考慮しているためです。高めに設定しておくことで、手元の水栓での微妙な温度調整が不要になり、快適かつスムーズにお湯を使えるようになります。安全性にも配慮しており、多くの機種で高温のお湯を出す際に音声で知らせる機能や、リモコンのロック機能が搭載されています。
まとめ:給湯温度40度にしてはいけない理由とは
この記事で解説した、給湯温度の設定に関する重要なポイントを以下にまとめます。
- 給湯温度40度設定が直接給湯器を壊すわけではない
- サーモスタット混合水栓に継続的な負荷がかかる可能性がある
- 水栓内部の部品が摩耗し寿命を縮めるリスクがある
- 多くのメーカーは給湯温度50度から60度を推奨している
- 高温設定はサーモスタット混合水栓の安定動作につながる
- 冬場は配管でお湯が冷めるため高め設定が快適
- 40度設定は追い焚きが増え光熱費がかさむ場合がある
- 50度設定でも使い方次第で光熱費の節約は可能
- 衛生面では50度以上の設定が雑菌繁殖のリスクを減らす
- エコキュートはタンク内の衛生維持のためにも高温設定が望ましい
- エコキュートの節約は「高温足し湯」の活用が効果的
- リンナイやノーリツなどの主要メーカーも50度から60度を推奨
- 2ハンドル混合水栓や単水栓では40度設定でも問題ないことが多い
- 光熱費は設定温度だけでなくお湯の使い方全体で考えることが大切
- 高温設定にする際は火傷のリスクに十分注意する