「エコキュートの追い炊き仕組みってどうなっているの?」「追い焚きと足し湯ではどっちが安いんだろう?」そんな疑問をお持ちではないでしょうか。
そもそも追い焚きとは何か、その仕組みを図解で分かりやすく知りたい方も多いはずです。また、お風呂を温め直す際に、新しいお湯を入れる風呂自動(お湯張り)と追い焚きはどっちがお得なのか、具体的な追い焚きの電気代や時間も気になります。
一方で、追い焚きは配管が汚いという話や、使える入浴剤に制限があること、機種によっては追い焚きができない場合があるなど、エコキュートの追い焚き機能のデメリットについて不安を感じる方もいるかもしれません。
この記事では、エコキュートの追い焚きの仕組みを基本から徹底解説します。
さらに、追い焚きと足し湯と自動保温ならどれが節約できるのかを比較し、賢い使い方からトラブル対処法まで、あなたの疑問に全てお答えします。
目次
エコキュートでの追い炊きの仕組みと基本機能
- 追い焚きとは?仕組みを図解で解説
- 追い焚きと足し湯と自動保温ならどれが節約?
- 追い焚きと足し湯はどっちが安い?
- 風呂自動(お湯張り)と追い焚きはどっちがお得?
- 追い焚きの電気代と時間について
追い焚きとは?仕組みを図解で解説
追い焚きとは、浴槽に入っているお湯の量を増やすことなく、設定された温度まで温め直す機能のことです。家族の入浴時間が空いてしまった場合でも、お湯を入れ替える必要がないため、水道代の節約につながる便利な機能といえます。
この機能は、主に「フルオート」タイプのエコキュートに搭載されています。では、貯湯式であるエコキュートは、どのような仕組みで浴槽のお湯を温め直しているのでしょうか。
追い焚きの仕組み
エコキュートの追い焚きは、貯湯タンクに貯められている高温のお湯の「熱」だけを利用して、浴槽のお湯を温めます。
- 浴槽のぬるくなったお湯を、ポンプで吸い上げます。
- 吸い上げたお湯は、貯湯タンクユニット内部にある「熱交換器」という部品に送られます。
- 熱交換器の中で、タンク内の熱いお湯の熱が、配管を通る浴槽のお湯へと移されます。
- 温められたお湯が、再び浴槽へと戻されます。
この仕組みの大きな特徴は、浴槽のお湯と貯湯タンクのお湯が直接混ざらない点です。浴槽のお湯は専用の配管を循環するだけなので、タンク内に貯められたきれいなお湯の衛生状態が保たれます。
追い焚きと足し湯と自動保温ならどれが節約?
エコキュートには追い焚きの他に、お湯を温かく保つための「足し湯」や「自動保温」といった機能があります。それぞれの特徴と、どの機能が最も節約につながるのかを比較してみましょう。
機能 | 仕組み | メリット | デメリット |
追い焚き | 浴槽のお湯を循環させ、タンクの熱で温め直す | 水道代がかからない | タンクのお湯の温度が下がる。電気代がかかる |
足し湯 | タンクのお湯と水を混ぜ、設定温度のお湯を浴槽に足す | 浴槽の湯量を増やせる | 水道代とタンクのお湯を消費する |
高温足し湯 | タンクの高温のお湯をそのまま浴槽に足す | 素早く温められる。最も光熱費を節約できる | タンクのお湯の消費量が多い。熱いお湯が出るので注意が必要 |
自動保温 | 浴槽の温度をセンサーが検知し、自動で追い焚きを行う | 手間なく湯温を一定に保てる | 誰も入らない時間も作動し、電気代が無駄になりやすい |
これらの機能を光熱費の観点から比較した場合、最も節約効果が高いのは「高温足し湯」です。追い焚きのように熱交換器を動かすための電気を使わず、また通常の足し湯のように温度調整のために多くの水を使う必要がないため、最も効率的にお湯を温めることができます。
追い焚きと足し湯はどっちが安い?
前述の通り、お湯を温めることだけを考えた場合、光熱費が安いのは「高温足し湯」です。では、通常の「足し湯」と「追い焚き」ではどうでしょうか。
追い焚きは、熱交換器を動かすための電気代がかかりますが、水道代はかかりません。一方、足し湯は、タンクのお湯と水道水を混ぜて設定温度にするため、水道代がかかります。
どちらが安くなるかは状況によりますが、浴槽のお湯がかなり冷めてしまい、温めるのに時間がかかる場合は、タンクの熱を多く消費する追い焚きよりも、高温足し湯で素早く温度を上げた方が結果的に安くなる傾向にあります。浴槽の湯量が減っている場合は、必然的に足し湯を選択することになります。
風呂自動(お湯張り)と追い焚きはどっちがお得?
前日の残り湯を追い焚きして再利用するのと、新しくお湯を張り直す(風呂自動)のでは、どちらがお得なのでしょうか。
節約の観点だけで見ると、残り湯の温度にもよりますが、冷え切った大量のお湯を長時間かけて温め直すよりも、新しくお湯を張る方が効率的で電気代が安く済むことが多いです。
また、衛生面も考慮すべきです。入浴後のお湯は、一晩で雑菌が数千倍に増殖するといわれています。特に免疫力が低い小さなお子様やご高齢の方がいるご家庭では、節約のためであっても残り湯の追い焚きは避け、毎日新しいお湯に入れ替えることをお勧めします。
追い焚きの電気代と時間について
エコキュートの追い焚きにかかる電気代や時間は、一概には言えません。なぜなら、浴槽のお湯の量や現在の温度、設定温度、外気温など多くの要因によって変動するからです。
一般的に、追い焚きにかかる時間は10分から20分程度です。電気代については、1回の追い焚きで数円から十数円程度が目安となりますが、これはあくまで電気料金が安い深夜電力の時間帯にタンクのお湯が十分に沸いている場合です。
もし日中の電気料金が高い時間帯に追い焚きを多用し、タンクのお湯の温度が下がって沸かし直し(沸き増し)が必要になると、想定以上の電気代がかかる可能性があります。
エコキュートでの追い炊きの仕組みの注意点と対処法
- エコキュート追い焚き機能のデメリットは?
- 追い焚きは汚い?
- 配管の掃除は必要?
- 追い焚きで入浴剤は使えるのか
- 追い焚きできないエコキュートはある?
エコキュート追い焚き機能のデメリットは?
便利な追い焚き機能ですが、いくつかのデメリットや注意点も存在します。
貯湯タンクのお湯の温度が下がる
追い焚きは、貯湯タンクに貯められたお湯の熱を利用します。そのため、追い焚き機能を使用すると、タンク内のお湯の温度が少しずつ下がっていきます。リモコンに表示される残湯量は、実際に残っている水の量ではなく、「設定温度で使えるお湯の量」を示しているため、タンクの湯温が下がると、この表示も減ってしまいます。追い焚きを多用すると、いざシャワーを使おうとした時にお湯が足りなくなる「湯切れ」のリスクが高まるのです。
衛生面の管理が必要
追い焚きは浴槽のお湯を循環させるため、配管内に皮脂汚れや雑菌が溜まりやすくなります。定期的な洗浄を怠ると、お湯が汚れたり、臭いの原因になったりする可能性があります。
電気代が高くなる可能性がある
前述の通り、追い焚きの使用は電気を消費します。特に自動保温機能を長時間使い続けたり、電気料金の高い日中に頻繁に追い焚きを行ったりすると、節約のために導入したはずのエコキュートの電気代が高くなる原因になりかねません。
追い焚きは汚い?
「追い焚き機能を使うと、配管が汚れて不衛生なのではないか」という疑問や不安を耳にすることがあります。この懸念は、追い焚きの仕組みを考えると、残念ながら事実として無視できない側面を持っています。定期的かつ適切なお手入れをしなければ、配管の内部には汚れが確実に蓄積していきます。
浴槽のお湯には、一見きれいに見えても、入浴した人の体から出た皮脂や角質、髪の毛、さらには石鹸のカスなどが溶け込んでいます。追い焚き機能は、このお湯をポンプで吸い上げて温め直し、再び浴槽へ戻すという循環システムです。そのため、お湯に含まれるこれらの汚れが、追い焚き配管の内側に少しずつ付着し、時間の経過とともに層を成していくのです。
汚れが引き起こす衛生上の問題
配管内に蓄積した汚れは、雑菌、特に「レジオネラ属菌」などが繁殖するための温床となり得ます。レジオネラ属菌は、ぬめりのある環境を好み、36度前後の温度で最も活発に増殖する性質を持っています。追い焚き配管の内部は、まさにこの菌にとって理想的な環境になりかねません。
健康な成人であれば、これらの雑菌が含まれたお湯に入っても直ちに健康被害が出ることは稀です。しかし、抵抗力や免疫力が低い小さなお子様やご高齢の方、体調を崩している方にとっては、感染症のリスクが全くないとは言い切れません。安心して毎日のお風呂を楽しむためには、衛生管理が不可欠です。
配管の掃除は必要か?自動洗浄機能だけでは不十分な理由
最近のフルオートタイプのエコキュートの多くには、浴槽の栓を抜くと、設定に応じて自動で配管内をきれいな水(またはお湯)で洗い流す「自動配管洗浄機能」が搭載されています。この機能は日常的な汚れをある程度洗い流すのに役立ちますが、それだけでは完璧とは言えません。
例えるなら、食器を手洗いした後のシンクを水でさっと流すようなものです。表面的な汚れは落ちますが、長期間使用するうちにこびりついた油汚れやぬめりまでは、水流だけでは完全に取り除くことが難しいのと同じです。配管内部に一度付着してしまった皮脂などの粘着性の高い汚れは、自動洗浄の水流だけでは剥がれ落ちにくく、徐々に蓄積されてしまいます。
推奨される手動での配管洗浄
このような理由から、衛生的な状態を維持するためには、定期的な手動での配管洗浄が強く推奨されます。市販されている風呂釜用の洗浄剤(例えば、ジョンソン社の「ジャバ」のような製品)を使い、3ヶ月から半年に一度を目安に徹底的な掃除を行うのが理想的です。
これらの洗浄剤には、配管内部にこびりついた皮脂汚れや湯垢を分解し、雑菌を除菌する成分が含まれています。使い方は製品によって異なりますが、一般的には浴槽に洗浄剤を溶かし、追い焚き機能を一定時間作動させて洗浄液を配管内に循環させるというものです。
定期的なメンテナンスを少し手間に感じるかもしれません。しかし、この一手間をかけることで、配管の汚れや雑菌の問題は解消され、いつでも清潔で気持ちの良いお風呂に入ることができます。
追い焚きで入浴剤は使えるのか
追い焚き機能があるエコキュートでは、使用できる入浴剤に制限があります。成分によっては、配管や熱交換器を腐食させたり、フィルターを詰まらせたりして、故障の原因となる可能性があるためです。
一般的に、以下のタイプの入浴剤は使用を避けるべきとされています。
- 硫黄、酸、アルカリ、塩分などを含むもの
- お湯が白く濁るにごり湯タイプのもの
- 固形物やとろみ成分が含まれるもの
一方で、メーカーは使用可能な入浴剤のタイプを指定しています。例えば、炭酸ガスが発泡するタイプの製品(花王の「バブ」など)は、多くのメーカーで使用が認められています。ご使用の際は、必ずエコキュートの取扱説明書を確認し、指定されたタイプの入浴剤を選ぶようにしましょう。
追い焚きできないエコキュートはある?
はい、全てのエコキュートに追い焚き機能が付いているわけではありません。追い焚き機能が搭載されているのは、基本的に「フルオート」タイプと呼ばれる機種のみです。
エコキュートには、主に3つの給湯タイプがあります。
給湯タイプ | 主な機能 | 追い焚き |
フルオート | 自動お湯はり、自動保温、自動足し湯、追い焚き | 可能 |
セミオート | 自動お湯はり、高温足し湯 | 不可 |
給湯専用 | 蛇口から手動でお湯を出すのみ | 不可 |
セミオートや給湯専用タイプは、お湯を循環させるための配管が1本しかないため、構造的に追い焚きができません。これらのタイプはフルオートに比べて本体価格が安いというメリットがありますが、追い焚き機能が必須と考える場合は、必ず「フルオート」タイプを選ぶ必要があります。
まとめ:エコキュートでの追い炊きの仕組み
この記事で解説した、エコキュートの追い焚きの仕組みに関する重要なポイントを以下にまとめます。
- 追い焚きは浴槽のお湯を減らさずに温め直す機能
- フルオートタイプのエコキュートにのみ搭載されている
- 浴槽のお湯をタンクの熱交換器で温める仕組み
- タンクのお湯と浴槽のお湯が直接混ざることはない
- 追い焚きをするとタンクのお湯の温度が下がり残湯量表示が減る
- 光熱費の節約を最優先するなら「高温足し湯」が最もお得
- 残り湯の追い焚きより新しくお湯を張る方が衛生的で効率的
- 追い焚きの多用は日中の沸き増しを招き電気代が高くなる原因に
- 追い焚き配管は汚れるため定期的な洗浄が必要
- 硫黄やにごり成分を含む入浴剤は故障の原因となるため使用不可
- メーカーが推奨するタイプの入浴剤なら使用可能
- お湯がぬるい場合は設定温度やフィルターの詰まりを確認する
- 追い焚きができないのはセミオートや給湯専用タイプ
- 追い焚き機能が必要なら必ずフルオートタイプを選ぶ
- 仕組みを理解しライフスタイルに合わせて賢く使うことが大切