家庭で電気とお湯を同時につくりだす「エネファーム」の導入を検討する際、多くの方が気になるのはその値段ではないでしょうか。エネファームとは?特徴は?という基本的な情報から、具体的なエネファームの値段や費用、さらにエネファーム導入に必要な費用相場まで、知りたいことは多岐にわたります。
この記事では、まずエネファームの仕組みを分かりやすく解説し、導入のメリット5選と、一方で無視できないエネファームのデメリットや、エネファームが普及しない理由にも迫ります。
また、ライバルであるエコキュートと比較してエネファームとエコキュートどっちがお得なのか、光熱費の観点から検証します。さらに、エネファームは10年後の寿命やメンテナンスで費用がかかるのか、エネファームのガス代高すぎると感じるのはなぜか、そして最終的にエネファームをやめた人の理由まで、踏み込んだ情報を提供します。
大阪ガスのような専用プランや、万が一の際に役立つエラーコード一覧、そして初期費用を抑えるための補助金制度についても触れ、あなたの疑問に総合的にお答えします。
目次
エネファームの値段はいくら?導入費用とメリット
- そもそもエネファームとは?特徴は?
- 発電と給湯を両立するエネファームの仕組み
- エネファーム導入に必要な費用相場と値段や費用
- 導入時に活用できる国の補助金について
- 知っておくべきエネファームのメリット5選
そもそもエネファームとは?特徴は?
エネファームとは、「家庭用燃料電池コージェネレーションシステム」の愛称です。少し難しい言葉に聞こえるかもしれませんが、要するに「都市ガスやLPガスを使って、家庭で電気とお湯を同時につくり出す自家発電設備」のことです。
最大の特長は、ガスから電気をつくる際に発生する熱を無駄にせず、その熱を利用してお湯を沸かす点にあります。この「電気と熱を同時に利用する」仕組みをコージェネレーション(Co-generation)と呼び、エネルギーを非常に効率よく使えるのがエネファームの核心的な価値と言えます。
電力会社から電気を買い、ガス会社からガスを買って給湯器でお湯を沸かす従来の暮らしと比べて、エネルギーのロスを大幅に削減できます。これにより、光熱費の節約やCO2排出量の削減に繋がり、環境に優しく経済的な暮らしを目指せるのが大きな特徴です。また、停電時でも発電を継続できるモデルもあり、災害への備えとしても注目されています。
発電と給湯を両立するエネファームの仕組み
エネファームがどのようにして電気とお湯をつくり出すのか、その仕組みは主に二つのユニットで成り立っています。
一つは「燃料電池ユニット」です。ここでは、まず家庭に供給される都市ガスやLPガスから、改質器という装置を使って水素を取り出します。そして、取り出した水素を空気中の酸素と化学反応させることで、電気を発生させます。これは、学校の理科で習った「水の電気分解」の逆の原理を利用したもので、発電時にCO2をほとんど排出しません。
もう一つが「貯湯ユニット」です。燃料電池ユニットで発電する際には、必ず熱が発生します。エネファームは、この排熱を捨てずに回収し、貯湯ユニット内の水を温めてお湯をつくります。つくられたお湯はタンクに貯めておき、お風呂やキッチン、洗面所などで使えるようになります。
もしお湯が足りなくなった場合や、床暖房・浴室暖房乾燥機などを使用する際には、バックアップ用の熱源機(ガス給湯器)が作動するため、湯切れの心配もありません。このように、発電と給湯を一つのシステムで効率的に行うのがエネファームの基本的な仕組みです。
エネファーム導入に必要な費用相場と値段や費用
エネファームを導入する際にかかる費用は、大きく分けて「本体価格」と「設置工事費」の二つです。
エネファームの本体価格は、メーカーや発電能力、貯湯タンクの容量によって異なりますが、希望小売価格でおおよそ180万円から250万円程度が一般的です。以前は300万円以上する高価な設備でしたが、技術開発と普及により、価格は少しずつ下がる傾向にあります。
設置工事費は、既存の給湯器の撤去費用や、配管・配線工事、各種設定作業などが含まれ、約30万円から80万円が相場です。住宅の状況や設置場所によって工事の難易度が変わるため、費用には幅があります。
したがって、エネファームの導入にかかる総額としては、おおよそ210万円から330万円程度を見ておく必要があります。決して安い投資ではありませんが、後述する補助金制度を活用することで、初期費用を大幅に抑えることが可能です。導入を検討する際は、必ず複数の業者から詳細な見積もりを取り、内訳をしっかりと確認することが大切になります。
項目 | 費用相場の目安 | 備考 |
本体価格 | 180万円 ~ 250万円 | メーカー、発電・貯湯能力により変動 |
設置工事費 | 30万円 ~ 80万円 | 住宅の状況や既存設備の撤去費を含む |
合計 | 210万円 ~ 330万円 | 補助金活用前の総額目安 |
導入時に活用できる国の補助金について
エネファームは高額な設備ですが、その導入を後押しするために国や自治体による補助金制度が用意されています。これらの制度をうまく活用することが、初期費用を抑えるための鍵となります。
2025年現在、国が主導する主要な補助金事業として「給湯省エネ2024事業」があります。これは、家庭のエネルギー消費で大きな割合を占める給湯分野の省エネ化を促進するもので、エネファームも対象となっています。この事業では、導入するエネファーム1台あたり、最大で18万円の補助金が交付されます。さらに、ネットワークに接続して気象情報と連携し、停電に備えて自動運転する機能を持つ機種には、2万円が加算される措置もあります。
これに加えて、お住まいの都道府県や市区町村が独自に補助金制度を設けている場合も少なくありません。国の補助金と自治体の補助金は併用できるケースも多く、組み合わせることで数十万円単位で負担を軽減できる可能性もあります。
ただし、これらの補助金は予算の上限が決まっており、申請期間も定められています。検討している方は、早めに経済産業省の特設サイトや、お住まいの自治体のホームページで最新の情報を確認し、施工業者と相談しながら申請準備を進めることをお勧めします。
知っておくべきエネファームのメリット5選
エネファームを導入することで得られるメリットは、光熱費の節約だけではありません。ここでは、代表的な5つのメリットをご紹介します。
光熱費を大幅に削減できる
最大のメリットは、やはり経済性です。自宅で発電することで電力会社から購入する電気の量を大幅に減らせます。さらに、発電時の排熱で効率よくお湯をつくるため、給湯にかかるガス代も削減可能です。ガス会社が提供するエネファーム専用の割引料金プランを契約すれば、さらにガス代を抑えることができます。
エネルギー効率が高く環境に優しい
前述の通り、エネファームは発電と給湯を同時に行うコージェネレーションシステムです。送電ロスもなく、エネルギーの総合効率は80%~97%と非常に高い水準を誇ります。エネルギーを無駄なく使うことで、CO2排出量を削減し、地球温暖化対策に貢献できます。
停電時でも電気が使える安心感(レジリエンス機能)
停電時発電継続機能付きのモデルであれば、万が一の停電時でも、ガスと水道が供給されていれば発電を続けられます。専用コンセントから最大700W程度の電気が使えるため、スマートフォンの充電や照明、テレビの視聴など、最低限の生活を維持することが可能です。
快適な暮らしをサポートする機能
発電時の排熱は、給湯だけでなく温水式の床暖房や浴室暖房乾燥機、ミストサウナなどにも利用できます。パワフルな温水暖房で、冬でも快適な室内環境を保つことができます。
太陽光発電との相性も良い
エネファームは天候に左右されずに安定して発電できます。そのため、天候によって発電量が変動する太陽光発電と組み合わせることで、お互いの弱点を補い合い、家庭で使用する電力の大部分をクリーンエネルギーでまかなう「ダブル発電」が実現できます。
エネファームの値段は妥当?デメリットと長期コスト
- エネファームのデメリットと普及しない理由
- エネファームとエコキュートどっちがお得?
- エネファームの10年後の寿命とやめた人の声
- エネファームはガス代高すぎると感じる?
- 大阪ガスのエネファーム専用料金プラン
エネファームのデメリットと普及しない理由
これほど高機能なエネファームですが、普及率が爆発的に伸び悩んでいるのにはいくつかの理由があります。導入を検討する上で必ず知っておきたいデメリットを解説します。
導入費用が非常に高額
最大のデメリットは、やはり初期費用の高さです。補助金を活用しても、自己負担額は100万円を超えるケースがほとんどです。一般的なガス給湯器やエコキュートと比較すると、数倍の価格差があり、この初期投資を回収するには長い年月がかかるため、導入の大きなハードルとなっています。
設置スペースの確保が必要
エネファームは「燃料電池ユニット」と「貯湯ユニット」の2つを設置する必要があります。特に貯湯タンクはそれなりの大きさがあるため、ある程度の設置スペースが屋外に必要です。都市部の住宅密集地など、敷地に余裕がない場合は設置が難しいケースもあります。
発電量がそこまで大きくない
家庭用エネファームの発電能力は最大で700W程度です。これは家庭の消費電力の一部をまかなうためのものであり、全ての電力を自給自足できるわけではありません。そのため、太陽光発電のように余った電気を売って利益を得る(売電)ことは、基本的にはできません。
定期的なメンテナンスが必要
多くのメーカーでは設置から10年間の無償メンテナンス期間を設けていますが、それを超えると有償での点検や部品交換が必要になります。特に10年目以降のメンテナンス費用は高額になる可能性があり、長期的なランニングコストとして考慮しておく必要があります。
これらの理由から、「高価で元が取れるか分からない」「設置場所がない」といった点が、エネファームが広く普及する上での課題となっています。
エネファームとエコキュートどっちがお得?
省エネ給湯器を検討する際、必ず比較対象となるのが「エコキュート」です。どちらも光熱費を削減できる点は共通していますが、仕組みやコストが大きく異なります。どちらがお得かは、ご家庭のライフスタイルやエネルギーの使い方によって変わってきます。
エコキュートは、空気の熱を利用してお湯を沸かすヒートポンプ式の電気給湯器です。主に電気代の安い深夜電力を使ってお湯を沸かし、タンクに貯めておく仕組みです。
比較項目 | エネファーム | エコキュート |
熱源 | 都市ガス / LPガス | 電気 |
仕組み | ガスで発電し、その排熱で給湯 | 電気で空気の熱を集めて給湯 |
発電機能 | あり | なし |
初期費用 | 高い(約210万円~) | 比較的安い(約40万円~) |
ランニングコスト | 電気代は減るが、ガス代が増える | 深夜電力利用で給湯費が安い |
停電時の利用 | 発電継続モデルあり | お湯は使えるが、沸き増し不可 |
お湯の使い方 | 湯切れの心配がほぼない | 湯切れのリスクあり |
補助金(2025年時点) | 最大18万円~ | 最大8万円~ |
コストで選ぶならエコキュート
初期費用をとにかく抑えたい場合は、エコキュートに軍配が上がります。エネファームの4分の1程度の費用で導入できることもあります。ランニングコストも、深夜電力をうまく活用すれば非常に安く抑えられます。
機能性と安心感で選ぶならエネファーム
日中の電気使用量が多いご家庭や、床暖房などを多用するご家庭、そして停電時の安心感を重視するならエネファームが向いています。発電によって日中の電気代を削減できるほか、湯切れの心配もありません。
どちらがお得かは一概には言えませんが、初期費用のハードルの低さから、現在はエコキュートを選ぶ家庭が多いのが実情です。
エネファームの10年後の寿命とやめた人の声
エネファームの製品寿命は、最長で20年とされています。ただし、これは定期的なメンテナンスをきちんと行うことが前提です。多くの製品には設置から10年間の無償メンテナンス保証が付いていますが、この期間が終了する10年後が一つの大きな節目となります。
10年を過ぎると、有償での定期点検や部品交換が必要になってきます。特に、発電を行う心臓部である燃料電池ユニット(発電ユニット)は、使用開始から20年が経過すると安全上の理由から自動的に運転を停止する設計になっています。発電機能が停止した後も、バックアップ熱源機があるため給湯器としては使い続けることが可能です。
しかし、この10年目以降のメンテナンス費用が、エネファームをやめた、あるいは更新をためらう大きな理由の一つになっています。総点検や部品交換で数十万円の費用がかかるケースもあり、「高額なメンテナンス費用を払うなら、もっと安価な最新の給湯器に交換した方が良い」と判断する方が少なくありません。
また、実際に使用してみて「思ったほど光熱費が下がらなかった」「エラーが頻繁に発生した」といった不満から、10年を待たずに使用をやめてしまうケースも見られます。
エネファームはガス代高すぎると感じる?
「エネファームを導入したら、電気代は安くなったけどガス代が高くなった」という声はよく聞かれます。これは、エネファームがガスを使って発電する仕組みである以上、ある程度は避けられない現象です。
エネファームは、家庭の電力使用量に応じて自動で発電運転を行います。そのため、日中の電気使用量が多ければ多いほど、発電のためにたくさんのガスを消費し、結果としてガス代が上がることになります。
この問題を解決するためには、ガス会社が提供している「エネファーム専用のガス料金プラン」への加入が必須となります。このプランは、エネファームを使用することを条件に、ガスの使用量が増えるほど料金単価が安くなるように設定されています。一般的なガス料金プランのままでエネファームを使い続けると、ガス代が割高になり、光熱費削減のメリットを十分に得られない可能性があります。
もしエネファームを導入してガス代が高いと感じる場合は、まずご自身のガス料金プランが専用プランになっているかを確認しましょう。その上で、ライフスタイルに合わせた最適な運転モード(例えば、発電時間を調整するモードなど)に設定を見直すことで、ガス代を抑制できる場合があります。
大阪ガスのエネファーム専用料金プラン
エネファームのガス代を抑える上で重要な役割を果たすのが、各ガス会社が提供する専用料金プランです。ここでは、一例として大阪ガスの専用プランをご紹介します。
大阪ガスでは、エネファームを利用している家庭向けに「マイホーム発電料金」というお得な料金プランを用意しています。このプランは、エネファームでガスを多く使用することを前提に、一般的なガス料金(一般料金)に比べてガス料金が割安になるように設定されています。
特に、ガス温水床暖房など、ガスを熱源とする暖房機器を併用している場合は、さらに割引率が高くなる「オプション割引」も適用されます。これにより、冬場のガス代が大幅に高くなるのを防ぎ、年間を通した光熱費の削減に大きく貢献します。
エネファームを導入する際には、こうした専用プランへの切り替えを必ず同時に行う必要があります。プランの詳細や割引率は契約内容によって異なるため、導入を検討する地域のガス会社に事前に問い合わせ、ご自身の家庭に最適なプランはどれか、シミュレーションをしてもらうことが不可欠です。
まとめ:エネファームの値段と導入のポイント
この記事では、エネファームの値段を中心に、その仕組みからメリット・デメリット、長期的なコストまで幅広く解説しました。最後に、導入を判断するための重要なポイントをまとめます。
- エネファームの導入費用は本体と工事費で210万円以上が目安
- 国の「給湯省エネ2024事業」で最大18万円以上の補助金が活用できる
- 自治体独自の補助金と併用できる場合もあるため必ず確認する
- 自宅で発電するため電気代は安くなるが、ガス使用量は増える
- ガス代を抑えるには専用の割引料金プランへの加入が必須
- 発電時の排熱を給湯に利用するためエネルギー効率が非常に高い
- 停電時でも発電できるモデルは災害への備えとして有効
- メリットだけでなく、高額な初期費用や設置スペースが必要な点がデメリット
- 初期費用を抑えたい場合はエコキュートの方が安価
- 製品寿命は最長20年だが、10年目以降は有償メンテナンスが必要
- 10年後のメンテナンス費用が高額になる可能性を考慮しておく
- 発電量は最大700W程度で、売電による収入は基本的に見込めない
- 床暖房など温水暖房を多用する家庭ではメリットが大きい
- 光熱費削減効果は家庭の電気・お湯の使い方によって大きく変わる
- 導入前には複数の業者から見積もりを取り、費用と効果を慎重に比較検討する