静かな住環境は、快適な暮らしに欠かせない要素の一つです。しかし、交通量の多い道路沿いや近隣の生活音など、様々な騒音に悩まされている方も少なくないでしょう。
そのような悩みを解決する手段として注目されているのが「二重窓」へのリフォームです。
ただ、実際に検討するとなると、二重窓の防音効果はどのくらいあるのか、期待したほどの効果が得られない「効果なし」といった話は本当なのか、といった疑問が浮かびます。
また、二重サッシは防音に効果がありますか?という基本的な問いや、防音対策が必要な騒音のレベルや種類についても知っておきたいところです。
この記事では、二重窓の防音リフォームにかかる費用相場はもちろん、「防音・遮音効果なし」と言われる原因と対策、さらには費用負担を軽減する二重窓リフォームの補助金制度(2025年の動向を含む)に至るまで、あなたの疑問に専門的な視点から詳しくお答えします。
ポイント
- 二重窓で防げる音の種類と具体的な防音効果のレベル
- 「効果なし」と感じる場合の主な原因と実践的な対策
- サッシやガラスの種類、住宅タイプ別の費用相場
- 費用を抑えるために活用できる国の補助金制度
目次
二重窓の防音費用と得られる効果は?
- 二重窓の防音効果はどのくらい?
- 二重サッシは防音に効果がありますか?
- 対象となる騒音のレベルや種類
- 二重窓の防音効果はどのくらい?
- 二重窓が防音効果なしとされる理由
- 「防音・遮音効果なし」と言われる原因と対策
二重窓の防音効果はどのくらい?
二重窓を設置することで、具体的にどの程度まで騒音を軽減できるのでしょうか。結論から言うと、適切な製品を選び正しく施工すれば、外部の騒音レベルを劇的に低減させることが可能です。
その性能を客観的に示す指標として、JIS(日本産業規格)が定める窓の遮音性能等級があります。これはT-1からT-4までの4段階で評価され、数字が大きいほど高い遮音性を持つことを意味します。中でも最高等級である「T-4」は、約40dB(デシベル)もの音を低減できる性能に相当します。
この「40dB低減」がどれほどの変化かというと、例えば、窓の外が「きわめてうるさい」と感じる80dBの環境(交通量の多い幹線道路沿いや救急車のサイレンなど)であった場合、室内では40dB程度まで静かになる計算です。40dBというのは、「静かな図書館」や「深夜の郊外」に相当する静けさであり、日常生活においてほとんど気にならないレベルと言えます。
音の大きさの感じ方には個人差がありますが、一般的に音圧が10dB下がると、人間の耳には音量が約半分に聞こえるとされています。つまり、40dBの低減は、音量が「半分」になり、さらにその「半分」になり…と4回繰り返されるような、非常に大きな変化をもたらすのです。
遮音等級(T値)ごとの効果の目安
JIS規格の遮音等級ごとに、具体的にどのような騒音がどの程度まで静かになるのか、目安を以下に示します
高い防音効果を実現するための条件
ただし、このT-4等級のような高い防音効果は、どのような二重窓でも得られるわけではありません。主に以下の3つの条件が満たされて、はじめて製品本来の性能が発揮されます。
- 高性能なサッシとガラスの組み合わせ: 気密性が高く音を伝えにくい「樹脂製サッシ」と、特殊な防音フィルムを挟み込んだ「防音合わせガラス」を組み合わせることが、T-4等級を実現する上での基本となります。
- 十分な空気層の確保: 既存の外窓と、新たに取り付ける内窓との間に設けられる空気層が、音を減衰させる重要な役割を担います。この空気層が広いほど、一般的に防音効果は高まります。
- 精密で隙間のない施工: どれだけ高性能な製品を選んでも、窓枠との間にわずかでも隙間があれば、そこから音は侵入してしまいます。専門業者によるミリ単位の正確な採寸と、歪みを調整しながらの丁寧な施工が不可欠です。
一方で、注意点もあります。二重窓は特に人の話し声のような中高音域の音に対して高い効果を発揮しますが、大型トラックの走行音や重低音の響く音楽のような「低周波音」は、完全に防ぐのが難しい場合があります。
これらの理由から、ご自身が対策したい騒音の種類やレベルをリフォーム会社に正確に伝え、最適な製品を提案してもらうことが大切です。可能であればメーカーのショールームを訪れ、実際に防音効果を体感してみることを強くおすすめします。
二重サッシは防音に効果がありますか?
二重サッシ(二重窓)は、防音対策として非常に有効な手段の一つです。住まいへの音の出入りは、実は壁や屋根よりも窓からが圧倒的に多いとされています。なぜなら、外壁が15cm程度の厚みを持つのに対し、窓ガラスの厚みは数mm程度しかなく、音が通過しやすいためです。
二重窓を設置すると、既存の外窓と新たに取り付けた内窓との間に空気の層が生まれます。この空気層が、外から伝わる音のエネルギーを吸収・減衰させるクッションのような役割を果たします。音がガラスを振動させ、その振動が空気層で和らげられ、さらに内窓で再度ブロックされることで、室内へ侵入する騒音を大幅に軽減できるのです。
また、気密性の高い樹脂製サッシなどを選ぶことで、サッシの隙間から漏れ入る音も防ぐことができ、防音効果はさらに高まります。したがって、適切な製品を選び、正しく施工すれば、二重サッシは防音に大きな効果を発揮すると考えられます。
対象となる騒音のレベルや種類
二重窓が効果を発揮する音には、「防げる音」と「防げない音」があります。この違いを理解することが、効果的な防音対策の第一歩となります。
二重窓が主に効果を発揮するのは、「空気音(空気伝搬音)」と呼ばれる、空気を振動させて伝わる音です。一方で、地面や建物の構造体を振動させて伝わる「固体音(固体伝搬音)」に対しては、二重窓だけでは十分な効果を得られません。
それぞれの音の具体例は以下の通りです。
音の種類 | 特徴 | 具体例 | 二重窓の効果 |
空気音 | 空気を振動させて伝わる音 | ・人の話し声、赤ちゃんの泣き声<br>・犬や猫の鳴き声<br>・テレビや楽器の音<br>・車のエンジン音やクラクション | ◎ 効果が高い |
固体音 | 地面や壁、床などを振動させて伝わる音 | ・上階の足音や物を落とす音<br>・ドアの開閉音<br>・工事現場の掘削音<br>・大型トラックが通る際の振動音 | △ 効果は限定的 |
このように、ご自身が悩まされている騒音がどちらのタイプなのかをまず見極めることが大切です。もし、上階の足音のような固体音に悩んでいる場合、窓のリフォームだけでは解決が難しく、床や天井への防音対策が必要になる場合があります。
二重窓の防音効果はどのくらい?
二重窓を設置することで、具体的にどの程度まで騒音を軽減できるのでしょうか。音の大きさは「dB(デシベル)」という単位で表されますが、一般的に二重窓は、外部の騒音レベルを約40dBも低減させる効果があるとされています。
これがどのくらいの変化かというと、例えば、窓の外が「きわめてうるさい」と感じる80dBの環境(交通量の多い道路沿いや救急車のサイレンなど)であった場合、二重窓を設置することで室内は40dB程度まで静かになります。40dBというのは、「静かな図書館」や「深夜の郊外」に相当する静けさです。
騒音レベル(dB) | 状況の目安 |
80dB | 交通量の多い道路、救急車のサイレン(近く) |
70dB | 騒々しい事務所の中、セミの鳴き声 |
60dB | 普通の会話、デパートの店内 |
50dB | 静かな事務所、家庭用エアコンの室外機 |
40dB | 静かな図書館、深夜の市内 |
30dB | 郊外の深夜、ささやき声 |
このように、日常生活において「うるさい」と感じるレベルの騒音を、気にならないレベルまで大幅に改善できる可能性を秘めています。ただし、この効果はサッシやガラスの種類、そして施工の精度によって変わるため、製品選びが鍵となります。メーカーのショールームなどで、実際に防音効果を体感してみるのも良いでしょう。
二重窓が防音効果なしとされる理由
高い防音効果が期待できる二重窓ですが、中には「設置したのに効果がなかった」という声も聞かれます。期待外れの結果に終わってしまうのには、いくつかの明確な理由が考えられます。
第一に、前述の通り、悩んでいる騒音が二重窓では防ぎにくい「固体音」であったケースです。上階からの足音や振動を伴う工事音などは、窓対策だけでは解決しません。
第二に、音の侵入経路が窓だけではなかったという可能性が挙げられます。音は空気の通り道があればどこからでも入ってきます。見落としがちなのが、壁に設置された換気口や吸気口です。また、リフォームしなかった他の部屋の窓から回り込んでくる音も考えられます。
第三に、DIYによる施工不良です。ホームセンターなどでキットを購入し、ご自身で設置する方もいますが、プロのように隙間なく取り付けるのは非常に困難です。わずかな隙間が防音性能を著しく低下させるため、専門業者による精密な採寸と施工が不可欠です。
これらの理由から、二重窓の性能を最大限に引き出すには、音の種類を特定し、窓以外の侵入経路も考慮した上で、専門家による適切な製品選びと施工を行うことが求められます。
「防音・遮音効果なし」と言われる原因と対策
「二重窓を設置したのに効果がない」という失敗を避けるためには、原因をさらに深く理解し、それぞれに適切な対策を講じることが大切です。
固体音や低周波音への対策
前述の通り、二重窓は床や壁を伝わる「固体音」には効果が薄いです。これに加えて、大型車の走行音や工場の機械音に含まれる「低周波音」も、窓だけでは防ぎきれないことがあります。これらの音に悩んでいる場合は、窓リフォームと合わせて、床に防音マットを敷く、壁に吸音パネルを設置するなど、建物全体での防音対策を検討する必要があります。
窓以外の音の侵入経路を塞ぐ
換気口は音の通り道になりやすい代表的な箇所です。防音フードや防音タイプの換気口カバーを取り付けることで、換気機能を維持しつつ、音の侵入を軽減できます。また、エアコンの配管を通すために壁に開けた穴の隙間も、パテなどでしっかりと埋めることが有効です。家全体の気密性を高める意識が、防音効果を向上させます。
騒音レベルに合ったサッシとガラスの選定
二重窓の防音性能は、サッシとガラスの組み合わせで大きく変わります。気密性が高く、音を伝えにくい「樹脂製サッシ」は、防音において最も効果的です。
ガラスについては、単なる複層ガラス(ペアガラス)よりも、2枚のガラスの厚みが異なる「異厚複層ガラス」や、特殊な防音フィルムを挟んだ「防音合わせガラス」が推奨されます。これらのガラスは、特定の周波数の音が共鳴して聞こえやすくなる現象を防ぎ、より高い遮音性能を発揮します。
専門業者による正確な施工
二重窓の効果は、施工の精度に大きく左右されます。専門業者は、ミリ単位での正確な採寸を行い、既存の窓枠のわずかな歪みなども考慮して設置します。これにより、窓と窓枠の間に隙間が生まれるのを防ぎ、製品が持つ本来の気密性・防音性を最大限に引き出すことができるのです。費用を抑えようとDIYを検討する気持ちも分かりますが、確実な効果を求めるのであれば、プロに依頼するのが賢明な選択と言えます。
二重窓の防音費用とリフォーム補助金
- マンションと一軒家での注意点
- 防音・遮音効果の高いおすすめ二重窓の費用や相場
- 二重窓リフォームで活用できる補助金
- 2025年の二重窓リフォーム補助金
マンションと一軒家での注意点
二重窓のリフォームを進めるにあたり、お住まいがマンションか一軒家かによって、注意すべき点が異なります。
マンションの場合
マンションの窓は、法律上「共用部分」と定められているのが一般的です。そのため、リフォームを行うには、まず管理組合に申請し、許可を得る必要があります。内側にもう一つ窓を設置する内窓(二重窓)リフォームは、既存の窓には手を加えないため、比較的許可が下りやすい傾向にあります。
しかし、管理規約で窓に関する細かなルールが定められている場合もあるため、必ず事前に規約を確認し、定められた手続きに従って進めてください。また、工事の際には、搬入経路の確保や近隣住民への事前挨拶など、共同住宅ならではの配慮も求められます。
一軒家の場合
一軒家の場合は、マンションのような管理規約の制約はありません。しかし、防音効果を最大限に高めるためには、建物全体の構造を考慮することが大切です。
例えば、外壁材が音を通しやすいトタンなどの金属系であったり、壁の断熱材が少なかったりすると、窓だけを対策しても壁から音が侵入し、期待した効果が得られないことがあります。また、建物の形状が複雑だと音が反響しやすいケースもあります。このような理由から、専門家による現地調査で、窓以外の音の侵入経路がないか、建物全体の防音性能をチェックしてもらうと、より効果的なリフォーム計画を立てられます。
防音・遮音効果の高いおすすめ二重窓の費用や相場
二重窓リフォームの費用は、窓のサイズ、そして選ぶサッシとガラスの種類によって大きく変動します。防音・遮音効果を優先する場合、一般的な仕様よりも高価になる傾向があります。
サッシとガラスの組み合わせと費用
防音性を高めるには、「樹脂製サッシ」と「防音合わせガラス」の組み合わせが最も効果的です。以下に、ガラスとサッシの種類による特徴と価格帯の目安をまとめます。
特徴 | 価格帯の傾向 | |
サッシ | 樹脂製サッシ | 気密性・防音性・断熱性に最も優れる |
アルミ樹脂複合サッシ | 耐久性に優れ、樹脂製より安価。防音性はやや劣る | |
ガラス | 単板ガラス | 防音・断熱性能は限定的 |
複層ガラス | 断熱性が主目的。防音性はあまり高くない | |
異厚複層ガラス | 2枚のガラス厚を変え、共鳴を防ぎ防音性を高める | |
防音合わせガラス | 特殊フィルムを挟み込み、最も高い防音性を発揮 |
窓のサイズ別・費用相場
実際の工事費込みの費用相場は、以下のようになります。防音効果の高い「樹脂サッシ+防音合わせガラス」でリフォームした場合の目安です。
- 腰高窓(幅1.8m × 高さ1.2m 程度): 約9万円 ~ 16万円
- 掃き出し窓(幅1.8m × 高さ2.0m 程度): 約15万円 ~ 25万円
これはあくまで目安であり、正確な費用はリフォーム会社による現地調査と見積もりが必要です。複数の業者から見積もりを取り、内容を比較検討することをおすすめします。
二重窓リフォームで活用できる補助金
二重窓のリフォームは、防音だけでなく断熱性能を向上させ、省エネにも繋がることから、国が補助金制度で支援しています。費用負担を大幅に軽減できる可能性があるため、必ずチェックしましょう。
代表的なのが、経済産業省や環境省が主導する住宅省エネキャンペーンの一環として実施される補助金事業です。近年では「先進的窓リノベ事業」などが知られており、性能の高い内窓を設置する場合、工事費用の半額近くが補助されるケースもありました。
これらの補助金を利用するには、いくつかの条件があります。
- 補助金の対象となる性能基準を満たした製品を選ぶこと
- 事務局に登録された施工業者に工事を依頼すること
- 申請期間内に手続きを完了させること
補助金制度は年度ごとに内容や予算が変わり、人気が高いため早期に予算上限に達して締め切られることもあります。リフォームを検討し始めたら、なるべく早く情報収集を開始し、対応可能なリフォーム会社に相談することが鍵となります。
2025年の二重窓リフォーム補助金
2023年、2024年と大規模な補助金事業が続いたことから、2025年についても同様の制度が継続されることへの期待が高まっています。
2024年に実施された「先進的窓リノベ2024事業」では、断熱性能に応じてS・A・Bといったグレードが設けられ、グレードの高い製品ほど補助額も大きくなる仕組みでした。二重窓の設置(内窓設置)では、1戸あたり最大200万円という高額な補助上限が設定されていました。
2025年の制度の詳細は、例年通りであれば2024年の秋から冬にかけて概要が発表される見込みです。現時点(2025年8月)では、2024年の制度を踏襲しつつ、一部条件が変更される可能性があります。省エネ化への要請は年々高まっているため、国からの手厚い支援は続くと考えられます。
リフォームを計画する際は、リフォーム会社の担当者に最新の補助金情報を確認してもらうのが最も確実です。多くの会社では、補助金の申請手続きも代行してくれるため、積極的に活用を相談してみましょう。
二重窓の防音費用と得られる効果:まとめ
この記事では、二重窓の防音効果や費用、そして補助金について詳しく解説してきました。最後に、納得のいくリフォームを実現するための重要なポイントをまとめます。
- 二重窓は空気を伝わる「空気音」に高い防音効果を発揮する
- 上階の足音など「固体音」への効果は限定的
- 悩んでいる騒音がどの種類かを見極めることが第一歩
- 防音効果はサッシとガラスの組み合わせで決まる
- 最も効果が高いのは「樹脂サッシ」と「防音合わせガラス」の組み合わせ
- 窓だけでなく換気口など他の音の侵入経路も確認する
- DIYでの施工は隙間ができやすく効果が半減するリスクがある
- 確実な効果を得るには専門業者による精密な施工が不可欠
- 費用相場は窓のサイズや選ぶ製品グレードによって変動する
- マンションでのリフォームは管理規約の確認が必須
- 一軒家では外壁など建物全体の構造も考慮に入れる
- 国の補助金制度を活用すれば費用負担を大幅に軽減できる
- 補助金には対象製品や施工業者の指定などの条件がある
- 2025年も大規模な補助金制度の継続が期待される
- 複数のリフォーム会社から見積もりを取り内容を比較検討する