太陽熱温水器の導入を考え、「太陽熱温水器のメーカー比較」と検索されていることでしょう。しかし、単純にメーカーを比べる前に、知っておくべき点が数多く存在します。
例えば、太陽熱温水器の仕組みと性能を正しく理解していますか。また、導入におけるデメリットや、そもそも太陽熱温水器が普及しない理由は何ですか、と疑問に思うかもしれません。
具体的な検討段階では、工事費込みの価格相場や、利用できる補助金、そして将来的な寿命と撤去費用も気になるところです。
さらに、ノーリツ・リンナイといった大手メーカーの評判や、朝日ソーラーの太陽熱温水器の評判を調べる方も多いでしょう。
代替案として太陽熱温水器とエコキュートのどちらを選ぶべきか、あるいは太陽熱温水器の自作は可能なのか、といった点まで考え始めると、情報が多くて混乱してしまうかもしれません。この記事では、それらの疑問を一つひとつ解消し、あなたが後悔しない選択をするためのお手伝いをします。
目次
太陽熱温水器メーカー比較の前に知るべき知識
- 太陽熱温水器の仕組みと性能
- デメリットを解説
- 太陽熱温水器が普及しない理由は何ですか?
- 太陽熱温水器の工事費込み価格相場
- 太陽熱温水器に使える補助金とは
- 太陽熱温水器を自作する方法と注意点
太陽熱温水器の仕組みと性能
太陽熱温水器は、太陽の熱エネルギーを利用してお湯を作るシンプルなシステムです。屋根の上などに設置した集熱器で太陽光を集め、その熱で水を温め、貯湯タンクに貯めて給湯に利用します。この方式は熱を熱として直接利用するため、太陽光のエネルギー変換効率が約50%と、太陽光発電(約20%)に比べて高い点が大きな特長です。
太陽熱温水器は、主に集熱方法と給湯方式によっていくつかの種類に分けられます。
集熱方法の種類
集熱器には大きく分けて「平板型」と「真空管式」の2種類があります。
- 平板型: 黒い塗装を施した金属板(集熱板)の上を水が流れる管が通っており、全体を強化ガラスで覆った構造です。古くからあるタイプで、比較的安価な製品が多くなっています。ただし、外気の影響を受けやすく、特に冬場は集熱効率が落ちる傾向にあります。
- 真空管式: 魔法瓶のように二重になったガラス管の間を真空にし、高い断熱性能を持たせたタイプです。外気温の影響を受けにくいため、冬場でも効率的に集熱できる点が強みです。平板型に比べて集熱効率が約1.35倍高いとされ、高性能ですが、価格は高くなる傾向が見られます。
給湯方式の種類
屋根で温めたお湯をどのように室内に供給するかによって、主に2つの方式があります。
- 自然落下式: 集熱器と貯湯タンクが一体になったタイプで、屋根の上に設置します。温められたお湯を、高低差を利用して下の階の浴槽などに直接供給する仕組みです。構造が単純で導入費用が安い反面、水圧が弱いためシャワーやキッチンでの利用には向いていません。
- 水道直結式: 集熱器で温めたお湯を、一度ガス給湯器などの補助熱源機を通して、水道圧のまま家全体に給湯する方式です。シャワーやキッチンでも快適に利用でき、湯温が足りない場合は自動で補助熱源機が作動するため使い勝手が良いです。ただし、システムが複雑になるため導入費用は高額になります。
太陽熱温水器のデメリットを解説
太陽エネルギーを有効活用できる太陽熱温水器ですが、導入を検討する上で知っておくべきデメリットも存在します。
まず、最大のデメリットは天候に性能が大きく左右される点です。雨や曇りの日が続くと十分な温度のお湯を作ることができず、特に日照時間の短い冬場は湯温が30℃~40℃程度までしか上がらないこともあります。そのため、多くの場合、補助的にガス給湯器や電気温水器などが必要となり、光熱費が完全にゼロになるわけではありません。
次に、設置に関する問題が挙げられます。本体と貯湯タンク内の水を合わせると重量が200kg~400kgにもなるため、屋根の強度によっては設置できないか、補強工事が必要になる場合があります。長期間にわたって屋根に負荷がかかり続けることで、雨漏りのリスクが高まる可能性も否定できません。
また、お湯の温度管理が難しい点もデメリットと考えられます。夏場は湯温が70℃以上になることもあり、そのまま使用すると火傷の危険があるため、水と混ぜて温度を調整する混合水栓(ミキシングバルブ)の設置が推奨されます。逆に、冬場は前述の通り湯温が低くなりがちです。
太陽熱温水器が普及しない理由は何ですか?
太陽熱温水器は高いエネルギー効率を誇るにもかかわらず、近年、国内での普及率は減少傾向にあります。太陽熱温水器が普及しない理由としては、いくつかの要因が複合的に絡み合っていると考えられます。
第一に、競合製品の進化と普及が挙げられます。特に、2000年代以降に広く普及した「エコキュート」は、空気の熱を利用してお湯を沸かすヒートポンプ式給湯器で、夜間の割安な電力を利用することでランニングコストを抑えられます。天候に左右されず安定してお湯を供給できる利便性や、オール電化住宅との相性の良さから、太陽熱温水器に代わる省エネ給湯器として市場に受け入れられました。
第二に、太陽光発電システムの台頭です。同じく太陽エネルギーを利用するシステムですが、太陽光発電は作った電気を売電できるという大きなメリットがありました。屋根という限られたスペースに設置するなら、お湯しか作れない温水器よりも、光熱費削減と売電収入の両方が期待できる太陽光発電を選ぶ家庭が増えたのは自然な流れと言えます。
第三に、過去の悪質な訪問販売によるイメージの悪化も無視できません。1990年代に、一部の業者による強引な販売手法が社会問題となり、「太陽熱温水器=高額で怪しい」というネガティブな印象が広がってしまいました。このときに付いたイメージが、現在も購入をためらわせる一因になっている可能性があります。
これらの理由から、性能は悪くないものの、他の省エネ設備との競争や過去の経緯によって、太陽熱温水器の普及は伸び悩んでいる状況です。
太陽熱温水器の工事費込み価格相場
太陽熱温水器を導入する際の費用は、製品の種類や設置条件によって大きく変動します。工事費込みの価格相場を把握しておくことが、適切な予算計画の第一歩となります。
価格を大きく左右するのは、前述の通り「自然落下式」か「水道直結式」かという点です。
種類 | 工事費込みの価格相場 | 特徴 |
自然落下式 | 15万円 ~ 30万円 | 構造がシンプルで本体価格が安い。設置工事も比較的容易なため、総費用を抑えられる。浴槽への給湯がメイン。 |
水道直結式 | 55万円 ~ 100万円 | システムが複雑で、補助熱源機との接続や混合水栓の設置などが必要になるため高額。家全体で利用可能。 |
この費用には、通常、温水器本体、架台、標準的な設置工事費が含まれます。ただし、以下のような場合には追加費用が発生する可能性があるため注意が必要です。
- 屋根の形状が特殊で、設置に手間がかかる場合
- 屋根の強度が不足しており、補強工事が必要な場合
- クレーン車など、特殊な重機が必要になる場合
- 既存の給湯器との接続が複雑な場合
正確な費用を知るためには、必ず複数の専門業者から見積もりを取り、工事内容の詳細を確認することが大切です。見積もりを比較する際は、総額だけでなく、どのような工事が含まれているかをしっかりとチェックしましょう。
太陽熱温水器に使える補助金とは
太陽熱温水器の導入にあたっては、国や地方自治体が実施する補助金制度を利用できる場合があります。初期費用を抑えるために、これらの制度を積極的に活用することをおすすめします。
国の補助金としては、省エネ性能の高い住宅設備を対象とした制度が利用できる可能性があります。例えば、「子育てエコホーム支援事業」のようなリフォーム支援事業では、過去の類似事業で高効率給湯器が補助対象に含まれていました。ただし、これらの制度は年度ごとに内容が変更されたり、予算が上限に達し次第終了したりするため、検討しているタイミングで利用できる制度があるか、必ず公式サイトで最新情報を確認する必要があります。
また、国の制度とは別に、多くの地方自治体(都道府県や市区町村)が独自に補助金制度を設けています。再生可能エネルギーの利用促進を目的としたもので、数万円程度の補助金が支給されるケースが多いようです。
補助金を利用するための注意点として、ほとんどの場合、「工事着工前に申請が必要」であることが挙げられます。契約後や工事完了後に申請しても受理されないため、業者と契約する前に、まずお住まいの自治体のウェブサイトを確認するか、環境関連の担当部署に問い合わせてみましょう。「(お住まいの市区町村名) 太陽熱温水器 補助金」といったキーワードで検索すると、関連情報を見つけやすくなります。
太陽熱温水器を自作する方法と注意点
太陽熱温水器のシンプルな構造から、費用を抑えるために自作(DIY)を検討する方もいるかもしれません。実際に、黒く塗装した塩ビ管やホースに水を通し、太陽熱で温める簡易的な温水器を自作する事例はインターネット上でも見られます。
しかし、太陽熱温水器の自作には多くのリスクが伴うため、基本的には推奨されません。
まず、最も懸念されるのが水漏れのリスクです。配管の接続が不十分だと、屋根の上で水漏れが発生し、建物に深刻なダメージを与える可能性があります。屋根の防水処理を傷つけてしまい、雨漏りの原因になることも考えられます。
次に、安全性と耐久性の問題です。自作した装置が強風や積雪の重みで破損・落下する危険性があります。万が一、落下して人や物に被害を与えた場合、重大な責任問題に発展しかねません。また、使用する素材によっては、長期間の紫外線や熱で劣化したり、水に有害物質が溶け出したりする衛生上の懸念も払拭できません。
言ってしまえば、専門知識 없이行う自作は、「安物買いの銭失い」になる可能性が非常に高いです。確かに初期費用は抑えられますが、水漏れによる修繕費用や、事故が起きた際の損害賠償などを考えると、結果的に高くつく恐れがあります。安全かつ確実に太陽熱の恩恵を受けるためには、信頼できるメーカーの製品を、専門の業者に依頼して設置することが賢明な選択です。
太陽熱温水器メーカーの比較と主要メーカーの選び方判断基準
- ノーリツ・リンナイの太陽熱温水器の評判
- 朝日ソーラーの太陽熱温水器の評判
- 太陽熱温水器とエコキュートどちらが良い?
- 寿命と撤去費用について
- 後悔しない太陽熱温水器メーカー比較の要点
ノーリツ・リンナイの太陽熱温水器の評判
給湯器の大手メーカーであるノーリツやリンナイも、かつては太陽熱温水器を製造・販売していました。これらのメーカーの製品は、高い技術力と品質で一定の評価を得ていましたが、現在では市場の変化に伴い、両社とも太陽熱温水器単体の事業からは事実上撤退、あるいは大幅に縮小しています。
ノーリツは、太陽熱を利用したハイブリッド給湯システム「ユコアHYBRID」などを展開していますが、屋根に設置する従来型の太陽熱温水器の新規販売は終了している状況です。リンナイも同様に、太陽熱利用のガス温水システムは扱っていますが、単体の温水器は見られなくなりました。
このため、これから新規でノーリツやリンナイの太陽熱温水器を導入することは困難です。もし中古品などを検討する場合でも、修理部品の供給が終了している可能性が高く、故障した際に対応できないリスクがあるため注意が必要です。
現在、これらのメーカーは太陽熱エネルギーとガスを効率的に組み合わせる「ハイブリッド給湯器」に注力しています。これは、太陽熱で温めた水をガス給湯器でさらに効率よく加熱するシステムで、天候に左右されやすい太陽熱温水器のデメリットを補い、高い省エネ性を実現するものです。太陽熱の利用を検討する際には、このような最新のハイブリッドシステムも選択肢に入れると良いでしょう。
朝日ソーラーの太陽熱温水器の評判
「朝日ソーラー」は、太陽熱温水器の専門メーカーとして高い知名度を誇ります。特にテレビCMなどで名前を知っている方も多いかもしれません。
朝日ソーラーの評判を語る上で、過去の訪問販売に関する問題は避けて通れません。1990年代に、一部の強引な販売手法が国民生活センターから指摘を受け、社会的な話題となりました。この出来事により、会社に対してネガティブなイメージを持つ人がいるのも事実です。
しかし、現在は企業体質も改善され、製品の性能やアフターサービスに力を入れているようです。朝日ソーラーの製品は、耐久性の高いステンレスを主要部品に使用している点や、長年の実績に基づいた施工ノウハウが強みとされています。ユーザーの口コミを見ると、「長年故障なく使えている」「ガス代が確實に安くなった」といった肯定的な評価がある一方で、「営業担当者の対応に差がある」「導入費用が他社より高めだった」といった声も見られます。
このように言うと、評価は分かれる部分もありますが、専門メーカーとしての長い歴史と実績は確かです。もし朝日ソーラーの製品を検討する場合は、過去のイメージだけで判断せず、現在の製品ラインナップや保証内容、そして担当者の説明などをしっかりと吟味し、複数の他社製品と比較した上で、納得のいく決断をすることが大切になります。
太陽熱温水器とエコキュートどちらが良い?
省エネ給湯器の導入を考えたとき、太陽熱温水器の比較対象としてよく挙げられるのが「エコキュート」です。どちらも光熱費削減に貢献しますが、仕組みや特性が大きく異なるため、ライフスタイルや価値観によって最適な選択は変わります。
ここでは、両者の違いを比較し、どちらがどのような家庭に向いているかを考えてみましょう。
比較項目 | 太陽熱温水器 | エコキュート |
熱源 | 太陽熱(自然エネルギー) | 大気の熱+電気 |
初期費用 | 安価(自然落下式)~高価(水道直結式) | 40万円 ~ 70万円 |
ランニングコスト | ほぼゼロ(補助熱源除く) | 月1,500円~(夜間電力利用) |
給湯の安定性 | 天候に左右され不安定 | 非常に安定 |
機能性 | 給湯のみ(シンプル) | 追い焚き、自動保温、スマホ連携など多機能 |
設置場所 | 屋根の上(重量負担あり) | 地上(ヒートポンプ+タンクのスペース要) |
太陽光発電との相性 | 連携は限定的(屋根スペースの競合) | 非常に良い(昼間の余剰電力でお湯を沸かせる) |
太陽熱温水器が向いている家庭
- とにかくシンプルな構造で、自然エネルギーを最大限活用したい
- 初期費用をできるだけ抑えたい(自然落下式の場合)
- 晴天の多い地域に住んでおり、日中にお湯を使うことが多い
- 多少の不便さ(天候による湯温変化など)を受け入れられる
エコキュートが向いている家庭
- 天候に関わらず、いつでも安定したお湯を使いたい
- オール電化住宅に住んでいる、または検討している
- 追い焚きや自動保温など、便利な機能を使いたい
- 太陽光発電を設置しており、余剰電力を有効活用したい
要するに、太陽熱温水器は自然の恵みをダイレクトに活かすシンプルな魅力があり、エコキュートは電気を効率的に使って快適性と安定性を実現する現代的な給湯器というわけです。ご自身の家庭で何を優先したいかを明確にすることが、最適な選択への近道となります。
寿命と撤去費用について
太陽熱温水器は構造が比較的シンプルなため、一般的に寿命が長いとされています。適切なメンテナンスを行えば、15年~20年程度は使用できると言われており、中には30年以上も稼働しているケースもあります。
ただし、これはあくまで目安であり、パッキンなどの消耗部品は経年で劣化するため、定期的な点検や交換が必要です。また、貯湯タンクや集熱器本体も、設置環境によってはサビや腐食が進行し、寿命を縮める原因となります。
そして、寿命を迎えた太陽熱温水器は、安全のために必ず撤去しなければなりません。放置すると、経年劣化によって部品が破損し、強風などで落下する危険性が高まります。また、劣化した箇所から雨水が浸入し、雨漏りの原因になることもあります。
撤去にかかる費用は、温水器のサイズや設置場所、足場の有無などによって変動しますが、一般的には10万円~20万円程度が相場です。特に、作業のために足場を組む必要がある場合は、費用が高額になる傾向があります。
導入を検討する際には、将来的にこの撤去費用が必要になることも念頭に置いておく必要があります。初期費用やランニングコストだけでなく、ライフサイクル全体でかかる費用を考慮して、導入を判断することが求められます。
後悔しない太陽熱温水器のメーカー比較:総括
この記事では、太陽熱温水器のメーカー比較を行う前に知っておくべき様々な情報について解説してきました。最後に、後悔しない選択をするための重要なポイントをまとめます。
- 太陽熱温水器には自然落下式と水道直結式の2種類がある
- 集熱効率は真空管式が平板式よりも高い傾向にある
- 天候によって給湯温度や湯量が不安定になる点が最大のデメリット
- 屋根への重量負担と、場合によっては補強工事が必要になることを考慮する
- 初期費用の目安は自然落下式で15万円から、水道直結式は55万円から
- 国や自治体の補助金制度がないか事前に確認することが大切
- 現在ノーリツやリンナイは太陽熱温水器事業から撤退・縮小している
- 朝日ソーラーは専門メーカーだが過去の経緯も踏まえ多角的に判断する
- エコキュートは安定性と多機能性が魅力で有力な比較対象となる
- 太陽光発電システムを設置するならエコキュートとの連携が有利
- 一般的な寿命は約15年から20年とされている
- 将来的に10万円から20万円程度の撤去費用が必要になることを忘れない
- 自作は水漏れや落下の危険性が高く基本的には推奨されない
- 冬場の凍結が心配な地域では防止ヒーターなどの対策が必要
- 複数の業者から見積もりを取り工事内容と総額を比較検討する
- 製品選びと同じくらい信頼できる施工業者選びが成功の鍵となる
- ご自身のライフスタイルと給湯ニーズに最も合ったシステムを選ぶ